「リモコン型霊界電話」誰かの花 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
リモコン型霊界電話
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自身の身に置き換えずにはいられない、ズッシリとした重さと現実感のある作品だった。
これが30周年作品でよかったんですか、ジャックアンドベティさん…
序盤はゆっくりと、しかし着実に登場人物とその状況を説明してゆく。
“事故”が起こってからは、もう目が離せない。
何人か、特に相太は意味深なカットが多く、本当に事故なのか、誰かが“犯人”なのかと惹き込まれた。
状況設定によるボカし方が非常に上手い。
結局、花があったからといって落としたとまでは断定できず、疑惑は疑惑のままで終わる。
この作品はそれでいいと思う。
疑念を深めながらも必死に目を逸らし、しかし逸らしきれない心情をカトウシンスケが絶妙に演じる。
事故前後で自然に変化する和田光沙もやはり上手い。
吉行和子のとぼけていながら哀しみを背負った様や、村上穂乃佳の柔らかさと正義感の同居も見事。
被害者が加害者に、加害者が被害者のようになる構図は上手く表現されている。
裁判での父の決断は、直前の「赦せるはずがない」の言葉と併せてとても深く響いてきた。
缶コーヒーすら許せない相太との対比も鋭い。
里美の「なんちゃって…」や最後の相太の見透かしたような目が怖い。
ただ、相太が車のアクセルを吹かすところ、孝秋の作業中に電気が落とされる場面などよく分からないシーンも。
孝秋の話を聞いていた同僚は、顔も見せず声も出さずで何かあるかと思ったが…
サスペンスやアート的な演出で散らかった印象になったのは勿体ない。
しかし野村一家がリモコンで兄と話すシーンは染みた。
要素を詰め込みすぎの面もあるが、それぞれしっかり考えさせられるようには出来ている。
人間ドラマに絞って描かれていれば、傑作たり得たかも。
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