「闇救急車という驚くべき仕事」ミッドナイト・ファミリー 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
闇救急車という驚くべき仕事
コンプライアンス重視の社会では、法やルールに背くことが絶対的にダメなことにされがちだ。その視点から見ると、この映画に描かれる一家のやっていることは悪いことになる。
本作は、人口900万人でイスタパラパなど非常に危険な犯罪多発地域もあるメキシコシティで、非合法の救急車ビジネスに従事する家族を捉えたドキュメンタリーだ。公営の救急車は45台しかないこの街では、この一家のような闇救急車がなくては人を助けることができない。非合法であるため警察の取り締まりをかいくぐりながら、さらに同業者とのカーチェイスで客の取り合いをしながら重症患者を日々助けている。
彼らは日々の生活費のためにこの仕事をやっていて、単なる聖人というわけではない。違法業者であるため客は支払いを拒否することもあり、生活は苦しい。それでも彼らのような存在がなければこの街でもっと多くの命が失われてしまう。世界の複雑さが見事に描かれた作品だ。
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