岬のマヨイガのレビュー・感想・評価
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「食事シーンがいい」
今年56本目。
食事シーンは素晴らしかったです。画面に立ちこめる湯気が何とも美味しそう。
今作は芦田愛菜さん主演と言う事で何か月も前から楽しみにしていて、自分を通すユイの役を芦田愛菜さんが上手く演じていました。
大発見はED曲の歌詞の一部分。座右の銘が一つ増えました。
優しさと慈愛に満ちた良作
非常に良作で、人の心に訴えかけていく要素が「日常の積み重ね」と「何気ない思いやり」という丁寧さで、優しさを感じ取るタイプ。
実に吉田玲子さん脚本らしく、じんわり涙を誘う。
震災や、家族の喪失、肉親から受けた虐待(毒親のDV)など、ここ10年で子どもたちが受けたさまざまなショックな出来事に対し、包み込むように見守るお年寄りと、遠野の妖怪たちも交えた優しさと慈愛に満ちたファンタジー。
戦争と恋愛という要素を外した『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の1話みたいとでもいおうか。
どこか映画版の『すみっコぐらし』を思い出すというか。
ただ、キャラデザインには美少女然とした記号が薄く、派手なアクションがあるわけでもなく、いわゆる「キャッチ」なポイントが少ない。
コレ、宣伝が難しいだろうな、……という印象。
『虹色ほたる』『肉子ちゃん』『河童のクゥ』みたいに良さは伝わったとしても、興行成績にはつながりにくそうなタイプなのが気がかり。
また、原作未読なので差異はわかりませんが、原作ファンがどのくらい響くのかが未知数(SNSでは「かなり違う」との意見が目立ちます)。
あれから10年経ち自身の環境も大きく変わった
2011年3月14日、自分は新宿区内某所の雑居ビル最上階(13階建)に向かうエレベーター内にいました。今でもあの日のドタバタは鮮明に覚えています。もっとも自分なんて東北各地で被災された方々のご苦労に比べれば些細なモンでしたが、でも今思うと、当時リーマンショック以降人生の展開が色々狂い出した矢先のトドメ的な災害でした。。。ンなこたともかく‥‥
内容は被災地域の人々とその地に対する想いを、日本古来の身近なファンタジーを用いた観やすく解りやすい内容で綴った児童文学原作、文化庁オススメの一作です。イメージ的には『夏目友人帳』に何となく風味が似てるかな?と思いました(コミカルな表現はあまりありませんが)。
そこに東北地方アレコレの素材と“聖地”をさり気なく絡め、地域の魅力や自然の美しさをスクリーンいっぱいの精密な描画で表現、3人の住む民家の生け垣のCGが水羊羹チックだった部分を除いてビジュアル的にも良好の出来かと思います。
そしてファンタジーにありがちの“ナゼ?”を有耶無耶にしつつ、とにかく内容に引き込んでしまうやり方も巧く行ってたと思います。キワ婆ちゃんの謎やユイ&ひよりの身の上があまり詳しく表現されず要点だけなのが気になるものの、作品が展開するにつれどうでも良くなる程に内容に惹かれていきます(吉田玲子の脚本力)。
そんな訳で作品の仕上がりとしては良作と言えるかと思います。
で、毎度申し訳ありませんが本作キャラの中の人の件、ナントカ無難に纏まっていたと思われます。ただ重箱の隅を突くと、駄目に思ったフシはやはりあります。
大竹しのぶはもう何作品もの中の人を演じられてて、アニメの声当てには相当慣れてらっしゃるのでしょうが、個人的にはあまーり評価しません。特に状況の説明台詞などの場面ではどうしても台本の棒読み加減が見え隠れし、個人的にはコチラの方がよっぽど演技が丸見えで『嘘っぽく聞こえ』ます(宮崎駿の逆)。そのため内容に引き込まれてる所を度々ハッと我に返って来てしまいます。勿論アイドルタレントのソレに比べればだいぶマシではありますが‥‥
粟野咲莉は子供の甲高い声質が幸いし気にはならず、芦田愛菜も頑張ってた?な感。ゲストタレントの件は言わば御新香みたいなものなので良しとします。
でもまぁ声優云々の件は至極個人的な印象ですので、ソレは深く考えない事にして、作品全体は申し上げた通りの良作なのは間違いありません。緊急事態宣言等々が明けて、世間が落ち着いたらご家族で鑑賞されてはいかがかと。
(文中敬称略)
人は置かれたところで咲くしかない
居場所のない子どもたちに家族ができた。頼りになるおばあさん。落ち着いてすごせる古くて大きい家も。
家族とはなんだろう。血のつながりは必須ではなく、安心していっしょに過ごし、いたわりあうことができればそれでよいのだろう。「ブラック・ウィドウ」でも同様の問いが示された。我々の多くは家族を維持することに疲れ、疑問を感じているのかもしれない。
狐崎に流れ着いた桜の枝をキワさんが庭に植えた。桜は根付き、つぼみがふくらみ始めて物語は終わる。人は置かれたところで、自分にできるやり方で咲くしかないと言っているようだ。
岩手県を舞台とするファンタジー。東日本大震災から10年、フジテレビの被災地支援プロジェクトにより制作。原作は2014年から2015年にかけて「岩手日報」に連載。
キャラが薄いのか?
遠野に行ってみたくなる!
そのタイトルからちょっと気になってはいたものの、キャラデザにイマイチ魅力を感じられず、鑑賞を迷っていた本作。たまたま時間ができたので、思いきって鑑賞してきましたが、予想以上によい作品でした。事前情報なしでの鑑賞だったので、「マヨイガ」は「迷い蛾」かと思っていて、まさかこんな話だとは思いませんでした。
ストーリーは、東日本大震災で避難所にいたユイがひょんなことからキワというおばあちゃんと孫のひよりと、岬の崖の上に建つマヨイガと呼ばれる家で一緒に暮らすことになるが、その家ではなにか不思議なことが起き、しだいにキワの秘密が明らかになるなかで、三人の絆が固く結ばれていくというもの。
東日本大震災、被災者の悲しみや苦しみ、それでもなおその土地を離れず生きる人々のたくましさ、故郷への想いなどを、ノスタルジックで美しい風景と遠野民話を交えて描いており、もうこれだけで心に深く染みてくるものがあります。加えて、父親との確執に苦しむユイと、両親との死別の悲しみが癒えないひよりの成長譚でもあります。
ユイとひよりが人と自然との触れ合いから徐々に心を開く前半に対して、後半は「ふしぎっと」と呼ばれる妖怪が登場する予想外の展開でしたが、遠野民話と震災復興や郷土愛を絡めた、吉田玲子さんの脚本は秀逸でした。ちょっとあっさりではありましたが、狐舞の複線回収しながらのクライマックスもよかったです。
それにしてもキワさんはいったい何者なのでしょう。考えようによっては、キワさんは特別な人ではなく、昔はみんな普通に妖怪と会話し、共存していたのではないかとも思えてきます。そんな東北の自然と神秘を肌で味わってみたいです。以前からずっと遠野を訪れてみたいと思っていたのですが、その思いがますます強くなりました。本作が一人でも多くの人の目に触れ,復興支援の一助になることを願います。
意外に壮大なスペクタクル
タイトルにあるマヨイガから、柳田國男の遠野物語に出てくるマヨヒガだろうと見当をつけての鑑賞である。遠野物語が物悲しさの漂う民間伝承であるのに対し、本作品は壊れた心の再生の物語であると同時に、ゲゲゲの鬼太郎みたいな妖怪退治の話でもある。意外に壮大なスペクタクルに仕上がっていた。
大規模な天災地変の被災者は、ある意味で難民のようだ。家は必ずしも家族とイコールではないが、重なる部分が大きい。家と家族を同時に失うと、世界との繋がりが遮断されてしまったような放逐感を味わうことになる。そこに個別の事情が加わる。悲しみの種類は人の数だけあるのだ。
本作品は大震災の被災者であるユイとひよりが、家と家族を喪失した無力感から、少しずつ精神的な安定と自立を取り戻していく成長物語である。トリックスターであるキワがマヨイガやその他の遠野物語の登場妖怪の助けを借りてユイとひよりを支える。
一方でゲゲゲの鬼太郎に出てくるような妖怪が、震災で弱ってしまった人々の心の隙間のようなものを栄養にして成長していく。この設定は上手い。悪役は短い間に強大になり、キワと妖怪たちだけが知っている危険な状況は、いよいよ風雲急を告げる。キワたちは勝てるのだろうか。ユイとひよりには何ができるのだろうか。
キワの声を担当した大竹しのぶはやはり大したものだ。この人の声のトーンが、作品そのもののトーンとなっている。以前コンサートに行ったことがあるが、とても味のある声で歌う。11月には「ザ・ドクター」という舞台があるので、大変楽しみである。
ユイを担当した芦田愛菜も好演。アフレコの様子を思い浮かべながら鑑賞したが、難しい場面で思い切った声を出していて感心した。歌も上手いから、そのうち大竹しのぶみたいにコンサートもやってほしいものだ。
ファンタジー色が強すぎかな
伝えたい事が分かる、いい映画
東日本大震災から10年
理不尽な仕打ちからの再起
素敵な作品
少女2人のサマーウォーズ
夏、ジュブナイル、異界との交流、日本の自然の優しさ(この映画ではトトロ的なものが主で、自然の凶暴さは出てきません)、小さき者の覚醒が大いなる邪悪を倒すという、ある意味問答無用の感動ストーリー。
もう一つの要素…『家族や絆』については、殊更にそこを強調するよりも世代を超えた友情と捉えたい。
サマーウォーズにも通じる定型定番かもしれません。
でも、いつの時代の子どもたちにも、リアルタイムで味わえる冒険譚があること自体が大事だし、そういうものを提供してくれる人たちがいることに感謝したくなります。
映画を見慣れたスレた大人でも、斜に構えることなく、ユイのように真っ直ぐな気持ちで向かえば、とても良い映画だと思います。
それにしても、芦田愛菜さん、大竹しのぶさんともなりきり度が凄い。演じているのはお二人だということが分かっているのに、上映中はユイとキワさんそのものにしか思えませんでした。
芦田さんのような若い方に言うのもなんですが、芸達者という言葉がとても自然に浮かんできます。
(余談)
自分の子どもが、『この前、ふしぎっと見たよ』と言ったとしたら、あなたはどちら?
①そっか!パパ(ママ)も会ってみたいからその場所に連れて行ってくれる?
②バカなこと言ってないで、夏休みの宿題片付けなさい❗️
自分は①のほうの親でありたいと思うのだが、子どもが5年生とか6年生くらいだと結構微妙ですね。
もう、その時期はとっくに過ぎてるからいいんですけど。
血の繋がりよりも大切なのは「思いやり」それが説教臭くない!!
戦争や災害によって、家族を失ったり、問題を抱えている者同士が肩を寄せ合い、擬似貴族のように生活を共にするようになっていく映画やドラマというのは、数多くある中で、近年は特にそういった「人と人との繋がり」を見つめ直すような作品が増えてきている。
ハンガリーの映画『この世界に残されて』でも、ホロコーストから生き延びた者たちが心の隙間を埋め合おうとする様子が描かれていたし、『護られなかった者たちへ』や『そして、バトンを渡された』など、今後公開される作品の中でも描かれていた。
血の繋がりだけではなく、他人同士でも支え合うことはできて、それがいつしか「家族」になり得るという大きなサイクルを描くことは、逆に人と人との繋がりを断ち切りながらも、経済的や精神的には繋がりが必要という両極端の中にあるこのコロナ禍に生きる人々の目には、どう映るのだろうか。
今回は東日本大震災と東北や関東に伝わる「迷い家」がベースになっていることもあり、岩手県が舞台となっているものの、日本の神話や妖怪、宗教的な象徴というものは共通して、ルーツを紐解いていくと、何か大きな問題に立ち向かうための心のより所だったり、教訓によるものが作りだしたものだったりする。
それらが「マヨイガ」を通して入り混じる独特の世界観は、「日本」という国が築いてきた伝統と歴史のメタファーのようにも感じられるのと同時に、人々の悲しみや絶望感が大きな巨悪となって立ちふさがるといった点でも、岩手の限定的なフィールドではなくて、「日本」そのものが舞台であるようにも感じた。
今回、脚本を務めたのは、多くのテレビや映画のアニメを手掛けた吉田玲子ではあるが、宗教色の強いものから、一般向けの作品まで幅広く手掛けていることもあって、今回も少し間違うと宗教色が強かったり、説教臭くなるところが、絶妙なバランスのファンタジーに仕上っている。
線の数が少ないシンプルなキャラクターの作画に関しては、好き嫌いが分かれるかもしれないが、やわらかいタッチの分、背景や自然、特に「緑」の使い方がよく映えているようでもある。
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