劇場公開日 2021年8月27日

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「マヨイガは未来のスマートホーム」岬のマヨイガ レントさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0マヨイガは未来のスマートホーム

2024年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

単純

岩手県盛岡市在住の原作者が東日本大震災をモチーフにした児童文学の映画化。原作は未読。

身寄りのないゆいとひよりの二人の少女は避難所で出会った謎の老婆キワに言われるまま不思議な古民家で共に生活することに。
その古民家はマヨイガといわれ、人をもてなす不思議な力を備えていた。穴の開いた障子紙を自動修復、適度にお風呂を自動で沸かす、言葉に反応して氷水まで差し出してくれる。あともう少し経てばスマートハウスとして実現できそうだな。転居届なんかもネットでできるだろうし。

ただ、マヨイガだけでは話が持たなかったのか、古来からの言い伝えである恐ろしい大蛇「アカメ」が震災でその封印を説かれ、今まさに人々に災いをもたらそうとしていた。それを阻止するためにキワは一人立ち向かう。そしてゆいたちも力を合わせてアカメを退治するというお話。

児童文学が原作なのでファンタジー映画なんだろうなあと思いながら見ていたけど、冒頭で震災の生々しいリアルな傷跡を見せられたり、話のトーンも中盤までは結構抑え気味だったので後半からのカッパの登場や古今東西の妖怪たちが一堂に会してる光景を見せられ、作品中盤までに築いた本作のリアリティラインが崩壊してしまった。
最後には少女たちが空飛ぶ狛犬に乗って大蛇を倒すという、中盤までに抱いた本作への印象とはあまりにかけ離れた展開に私自身その振れ幅についていけず振り落とされてしまった。
心に傷を負った少女たちがマヨイガでの疑似家族生活の中で心が癒され徐々に成長していくというほのぼのした物語を想像していたんだけど、彼女たちの成長のために大蛇退治が必要だったのかなあ。
何でも願いが叶うマヨイガ、ひよりは死別した両親を生き返らせてと願うけどそれはかなえられないとか、そういうシーンがあれば泣いてたかも。

この物語を見る限りだと震災もあまり活かされてなかったような気がする。ひよりは震災のショックで口が聞けなくなったわけでもないし、ゆいも震災とは関係なく虐待で家出してきたわけだし。
あえて東日本大震災を題材にする必要性があったのだろうか。あるいはあの大蛇を震災に見立てて、大蛇を倒すことで震災からの復興をイメージとしたものなのかな。大蛇は震災で傷ついた人々の不安や悲しみ、恐怖の象徴として描かれたものなのかも。原作とは人物の設定も変えてあるらしいので原作は一度読んでみたい。

レント