劇場公開日 2021年8月27日

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「【岩手は不思議がいっぱい】」岬のマヨイガ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【岩手は不思議がいっぱい】

2021年9月2日
iPhoneアプリから投稿

震災後、悲しみから、生活基盤を失って、地元を離れた人たちや、それでも残ってなんとかやっている人たちに向けた応援歌のような作品じゃないのかと思う。

それにしても、岩手は遠野を抱えるだけあって、ふしぎっと(不思議なものたち)の宝庫だ。

「むがし、むがし、あったずもな」で始まる物語は、ものすごく興味を惹かれる。

「すんぺすんな」は、文字通り(?)、「心配するな」の意味なのだが、実は「大丈夫だ」というニュアンスも多分に含んでいる。

そう、心配しないで、大丈夫だからと、この地方の人たちは昔からお互い励ましあってやってきたのだ。

多くの災害も乗り切ってきたのだ。

だから、身寄りのない人にも、孤独を抱えた人にも優しいのだ。

人々の繊細な心、心細さにつけ入って弱らせる象徴が「あがめ(赤目)」だ。

ここのお祭りは、「すんぺすな」と励ましあうのが本来の目的だったのではないのか。

「あがめ」を退けた後、それを封じ込めるのではなくて、「あがめ」にも何か言い分があったのかもしれないと、家の中に祀ったことも、独特な日本の古来からの神様たちの向き合い方のような気がする。

生前理不尽な扱いを受けた者たちの怒りを畏れ、それを鎮める目的で、それらを神として祀り、ともに暮らし、2度と、そうしたことが起きないよう、教訓を伝えようとしたのだ。

分断を抱える現代社会の僕達は、こうした古き良き日本の伝統から、学べることが、まだあるのかもしれない。

ワンコ