「優しい居場所」岬のマヨイガ Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
優しい居場所
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震災から復興していく街の現実と、遥かな昔の民話が溶け合う。境界線をぼやかしながら、物語は進行します。
しかし神様や妖たちの素顔が、ここまで明らかになる作品とは思わなかった。例えばカッパたちが最初に登場するシーンでは、彼らが姿を現すまでに微妙な間があったから、女の子二人には人に見えるのだなとか考えていたのです。それが酒盛りからは一気にファンタジーに化けてしまって、これはうれしい予想外れ。
妖怪アガメは、人や生き物を呑み込んだりするのではなく、抜け殻にして追い払って遠ざける魔物。人や生き物の暮らす場を作るマヨイガとは、対照的な存在として登場する。
ごく単純に見なせば、自分の回りに壁を作っているユイもひよりも、他を傷つける、傷つけないの大きな違いはあれど、他のものを受け入れようとしない。寂しさが生に対する想いを潰して、諦めの中で人を孤立させてしまう。
気持ちを楽に、出来ることは頑張ってと繰り返すキワさん。何故か、冒頭の晩飯シーンで目頭が熱くなりました。まだ物語は、ほとんど姿を現してもいなかったのに。
アガメさえも掛け軸の絵になって飾られて(と思いました)、言うほどたやすくなくても、誰でも何処かに居場所はあると言う話。
アガメとの対決にもう一波乱、二波乱欲しかったり、全体的にサラッとした作りの箇所も感じましたが、実に優しいマヨイガに乾杯。
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