「息子を想う母の決意が傾いたゲイバーを再生する、キッチュでキュートなサクセスストーリー」ステージ・マザー よねさんの映画レビュー(感想・評価)
息子を想う母の決意が傾いたゲイバーを再生する、キッチュでキュートなサクセスストーリー
テキサスの小さな町にある教会で聖歌隊の指揮者をしている主婦メイベリンの元に音信不通だった息子リッキーの訃報が届く。悲しみに暮れる彼女は意を決してリッキーの葬儀に参列すべくサンフランシスコに向かうが、ドラァグクイーン達が歌い踊る風変わりな葬儀にいたたまれず途中退席してしまう。リッキーの自宅を訪ねたメイベリンは、彼の恋人ネイサンから二人が共同経営しているゲイバーが経営難に陥っていることを知る。ネイサンはメイベリンが経営権目当てでやって来たと思い警戒するが、自分にバーの経営権が移ったことを知らされたメイベリンはリッキーが遺したバーを再建することを決心する。
ジャッキー・ウィーバーが演じるメイベリンがとにかく健気。家出したリッキーを全く理解しようとしなかった夫ジェブの反対を押し切ってバー経営に乗り出し、荒廃した生活ゆえに夭逝したリッキーの二の舞を踏ませまいとリッキーの友人達やその家族にも手を差し伸べる。バーの内装も変更し口パク主体だった退屈な舞台を一新、観光客にもアピールするような宣伝にも抜かりなし。小柄でキュートなお婆ちゃんが笑顔で困難を乗り切っていく様に彼女を煙たがっていた人達が少しずつ感化されていく展開はもうずっと涙で霞んでました。絵に描いたような餅みたいなお話と言ってしまえばそれまでですが、子供を愛する親の気持ち、特に息子を愛する母親の気持ちをガッツリ汲んだファンタジーでありながら、旧態依然としたオッサン達へ鉄槌を下す描写も忘れていない社会派でもあります。中古レコードショップを舞台にしたちょっとしたシニアの恋も添えられててとにかくどこを切り取ってもキッチュでキュートな愛おしい作品です。