「それぞれの居場所」ステージ・マザー B25(海外出張の為一時休会予定)さんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの居場所
J.ウィーバー演じるメイベリンは冒頭に息子リッキーの訃報を知るところから始まる。親子関係は破綻しており父親は彼の葬儀に行くことを拒否しメイベリン一人葬儀に行く事となる。
息子はゲイであり彼のパートナーであるネイサンと出会う。
そこで予告にある通り息子が生前経営していたゲイバーの相続やらを引き継ぐ事を知らされ戸惑う。
ネイサンもまた当初はリッキーが生前ゲイである事を両親は十分に理解してくれてないと聞いていたためメイベリンの存在を拒むが、メイベリンはリッキーと十分に過ごす事ができなかった時間、彼がどう生きていたか興味を持ちその道を進み、次第にゲイバー、そしてゲイに生きる者達の存在を理解し始める。
最終的には彼らゲイ達と理解し友となり、メイベリン自身今後も経営に関わる事を望むが、旦那は最後まで理解することはできず最後は別々の道を進むところで作品は終わる。
良い意味で大きな裏切る展開もなく予告通りにストーリーは進むため非常に見やすく、そしてハートフルな作品である。
特に個人的にこの作品の好きなところはそれぞれの居場所を守る大切さだ。
この世界に生きる誰しもが居場所があり自分が所属するサークルを持つ。もちろんその居場所というのは状況によっては失われる事もある。この作品でいえば経営事情が悪化すればゲイバーに生きる彼らの居場所が失われるのは悲しい事ではあるが仕方のないことでもある。
彼らのような社会的には決してノーマルな居場所ではなく、敵を作りやすい居場所かもしれないが、そういう居場所を否定したり奪う権利は誰にもない。
リッキーはゲイであるが故に生前自分の居場所が中々見つける事ができなかったであろう。だからこそあのゲイバーをこよなく愛し、そして亡くなった今でもその場所を訪れたメイベリンがリッキーの強い意思に惹かれたのではないか。
彼女もまた最後に平穏な生活からこのゲイバーに移り行く姿も彼女が見出した居場所であろう。
また同時に亡くなったからそれでおしまいではなく、亡くなってしまったけど生前に理解してあげられなかった事を少しづつ理解しようと歩んでいくメイベリンの姿がとても美しい。
もちろん亡くなる前に価値観を共有し、理解し合える事が何よりも幸せな事ではあるが亡くなってからでも故人の意思を引き継ぐ姿はグッとくる。
上にも書いた通り決して大きな展開があるわけではないが安心して見る事ができそして心温まる作品であった。