「ブラックパワーで宇宙進出! ネタ度超新星爆発だが出来は推して知るべし(笑)」サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラックパワーで宇宙進出! ネタ度超新星爆発だが出来は推して知るべし(笑)
多分そんなこったろうと思って覚悟を決めて観に行きましたが、ここまでひっでえ出来だといっそ清々しいな(笑)。
レア度100%! ネタ度100%! キッチュ度100%!
ビジュアルインパクトもメガトン級!!
でも映画の完成度はありていにいってゴミ以下!!!
まあそれもひっくるめて楽しかったです。
新興宗教性が強すぎて意味がわからないとか、アート性が強すぎて理解が及ばないとか以前に、単に断片的なお芝居と演奏シーンと演説シーンを雑駁に並べて切り貼りしただけのフィルムなので、純粋に仕上がり自体が本当にひどい。
ドラマパートも、そのへんの三流大学の映研でも今日びもう少しまともなもんは撮るだろうってくらいのへっぽこ芝居&気のない演出で、無駄におっかけアクションとか虐待される美女とか身代わりになって撃たれる青年とか出てくる痛快活劇仕立てなぶん、なんだか子供のころに熱にうなされて見た悪い夢のようだ。
これで笑えたり、マヌケな演出で驚倒したりってのがあればまだ救われるってもんだが、総じて「単純に退屈」で、何度も猛烈な睡魔に襲われたのは僕だけではあるまい。
まあ、宇宙船到着シーンとか、バカな面接シーンとか、一周回ってなんかちょっとだけ面白かったような気もしないでもないが……。
音楽も、これがフリージャズとしてどの程度のものなのかは専門外なんでよくわかりませんが、ダメなゆるいトランスみたいにしか聴こえなかったなあ。
でも、完全にどしろうとのサン・ラーが、なんか確信をもって意外に小賢しい演技をかましたりしてるのは幾分ほほえましいし、とにかくサイケデリックな画面のカラフルさと、小道具・衣装の造形センスはすばらしい。(途中まで全く気付いてなかってけど、なんでエジプトの恰好かっていうと、ブラックピープルが「王」として君臨しえた時代ってことなのね! 日本人の認識からするとほんまかいなって気もするが、アメリカの黒人コミュニティにおいて、エジプト古代王朝が黒人のルーツというのは、まあまあ共有されてる観念なんだそうです。へええ)
なにより、「ブラックパワーで宇宙に」「エネルギー源が音楽」って教義自体が、最っ高にイカしてるので、もうそれでじゅうぶんなのかもしれない。
この映画の公開まで、これだけの面白人間についてぜんぜん知らなかったんだけど、向こうじゃどれくらい知られてる人なんだろう? と思って検索してみたら、ちゃんとオフィシャルHPが今でもあって(なぜか英語とスペイン語仕様)、晩年の好々爺になったサン・ラーがサックスくわえてお出迎えしてくれてほっこり。
おじいちゃん、またブラックパワー巻きあがってるよ。土星で見守っててあげてね。