「コロナ禍の米国をノーマスクで駆け回るバカ父娘が暴き出す人間の本質に泣きました」続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
コロナ禍の米国をノーマスクで駆け回るバカ父娘が暴き出す人間の本質に泣きました
カザフスタンのジャーナリスト、ボラットはド下品な取材で祖国カザフスタンに大恥をかかせてしまった罪で強制収容所に収監されていた。トランプ政権にガン無視され続ける現状を打破しようと考えたカザフスタン大統領はボラットを開放し、密命を与える。それは自国の文化大臣でサルのジョニーをトランプに貢ぐこと。先に貨物船で米国に渡ったボラットは航空便で送られたジョニーを待つが届いた檻に入っていたのはボラットの娘トゥーターだった。
前作で全米に顔が知れ渡ってしまったボラットに代わって体を張るのがトゥーター。一体どっから見つけてきたんだ?レベルにキュートですがもうやることがエゲツナイ。特に印象的なのは社交界の場で披露する“生殖の踊り“。これはちょっと正視に耐えないくらいに下品なので何にも知らずにこれを直に見せられた人の胸中を思うと胸が痛みます。あとはマイケル・ペンス副大統領の集会で観客席からペ○スさ〜ん!と呼びかけて屈強なガードマンに摘み出されたり、Qアノンの集会で”武漢ウィルスの歌”を披露したり極上の下品なシャレがもうこれでもかと全方位に撒き散らされていて、特にトランプ政権下で蔓延する女性蔑視、黒人差別に対する猛烈な誉め殺しには開いた口が塞がりません。しかし本作が撒き散らすシャレよりも全米に蔓延しているのが新型コロナ。マスクを付けないトランピスト達の間をノーマスクで駆け回る父娘ってもうそこだけ切り取っても命懸けなのでハラハラさせられっぱなし。しかしそんなムチャクチャアナーキーな本作は、正気とは思えない陰謀論やありとあらゆる与太話をエビデンスもなしに信じる人達が実は余りにも善良であるということをシレッと暴き出し、クライマックスにドエライお土産を置いていきます。いやこんな下品なギャグだらけの映画に泣かされるとは思わなかったです。そしてエンドロール前のド下品なオチに被さるアノ曲のイントロでアラフィフ全員号泣でしょう。確かな知性に裏打ちされた下品が炙り出す人間の根源的な優しさに触れて本当に胸が痛いです。物凄い傑作です。