ドライブ・マイ・カーのレビュー・感想・評価
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居心地の良い違和感
観に行くタイミングがなく、公開から3週経ってようやく鑑賞。
序盤の主人公・家福の奥さんの不倫や夫婦としてのセックスで創作を生み出している様子を見ると、刺激が欲しくてたまらないんだろうなと思い、生々しくもリアリティがあって感心しました。奥さんの突然のくも膜下出血での死も悲しい出来事だけに終わらず、後半に活かしてくるのでまた驚きました。
タイトル通り、今作は車に乗っているシーンが多めですが、その車に乗っている時間が観ている側からしてもとても居心地の良いもので、最初はドライバー・渡利がつくことを敬遠していた家福が、彼女の運転スキルを認めて、話の輪を広げたり、オススメの場所を教えて貰ったり、助手席に座ったり、車内タバコを許したりと、信頼していく描写を車内で表している魅せ方はグイグイと引き込まれるものがあり、凄いなと思いました。
役者陣の演技もとっても見応えがあり、西島さんの物語のテンポにビシッとハマる舞台上での演技や、カセットテープに合わせての語り、物語上殆ど激昂する場面はありませんが、様々な感情が飛び交っていました。三浦透子さんの淡々とした喋りもとっても心地が良くて、高槻演じる岡田将生さんの別人が憑依したかのような狂気的な部分も見ることができて良かったです。手話での会話で育んだ愛とメインストーリーではないものにもスポットが当たっており、バランス良く観ることができました。
高槻が喧嘩でボッコボコにした相手が死んでしまい、高槻が逮捕され、舞台が一度滞ってしまいますが、ここで何を思ったか家福が終盤で広島から北海道へドライブするというぶっ飛んだ流れを平然とやってのけるので笑ってしまいました。汚点という訳ではありませんが、急に現実味消えたなと思いました笑。北海道で語られる2人の過去の話は、殺しと同様に残されたものがずっと背負っていくものという描写には震えました。決して自分は悪くないのに、目に焼きつけた光景を背負っていくという生々しさが垣間見えました。
なんとか舞台も成功に導き、最後は家福の車を渡利が引き受けて終わりました。原作を読んでいないので最後はよく分かりませんでしたが、前向きに進んでいるんだろうなという感じに自分は捉えました。
179分という短い映画なら2本観れる長さですが、そんな長さを感じさせないくらいあっという間に終わりました。上映時間の長さで敬遠されている方がいたら、そんなこと気にせずに観に行って欲しいなと思いました。
鑑賞日 9/9
鑑賞時間 12:40〜15:50
座席 H-1
評判が良かったので
透子運転の車に揺られているような心地よさ
2021年劇場鑑賞18本目 傑作 75点
公開日に見にいったのにも関わらず、2週間近くレビューしていなかった作品。
私が一番好きな俳優さんである西島秀俊さん主演ということで、期待していましたが期待通りの作品でした。
平日の朝からの上映だったのにも関わらず、ほぼ満員で観客の年齢層が非常に高めで、国外で評価を受けているので聞きつけて足を運んだ人も多いのかなと思い、いち西島さんファンとして嬉しかったです。
作品についてですが、久しぶりに心地よい、近年の邦画に多い安っぽさを感じられないこれぞ映画だよねと思えた作品でした。
上映時間が3時間近くありますが、その長さを感じないほどの充実感で、表現の上でのゆとりが随所で感じられ、意味のある3時間だと思いました。
ドラマ上りや実写映画、キャストばかり豪華な作品のような、邦画特有の気質がある作品が増える中、こういった空気を感じられる作品もちゃんと残り続けてほしいです。
それでも生きていく
家福の演出方法は、感情を極力廃した本読みをひたすら繰り返すというもの。俳優陣もこれには少々焦れ気味なのだが、この本読みこそ、いざ実際に動きを伴う稽古に移った段階で効果を発揮する。この映画自体、観客も冒頭から家福の妻音による『ワーニャ伯父さん』のセリフの録音を繰り返し聞くことになるのだが、このセリフのひとつひとつがラストに向かってこの物語の中で大きく響いてくる。この映画の俳優陣も感情をむき出しにするシーンはほぼないが、これもラスト近くで家福とみさきが心情を吐露する場面で効いてくる。家福もみさきも自分の感情を押し殺してきたが故に苦しんできたが、お互いに相応しい相手に出会えたことでようやく心のうちを吐き出すことが出来たのだ。
西島秀俊、三浦透子の好演は勿論だが、この映画の中では唯一自らの行動をコントロール出来ない高槻を演じた岡田将生の演技も忘れがたい。
音から聞いたという前世がヤツメウナギの女の話のその後を語るシーン不気味さは、彼の中の闇を感じさせ絶品。
何よりも、原作『女のいない男たち』からの数篇、そしてチェーホフの『ワーニャ伯父さん』を融合させた脚本が素晴らしかった。
車の色はよいが、終止形か命令形かわからない。
※追記
長編映画賞というカテゴリーがそもそも気怠い。
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心理重視の独特の湿度のある作品。
場面場面に散見される間の取り方も綺麗で、あまり欠点は無いのだが、
如何せん映画全体の尺が長い。映画ちょい好きーポンポさんのいう適尺=90分の倍である。倍。
もう少しコンパクトに出来る部分があるようにも思える。本であれば途中でしおりをはさめるが、映画(館)ではそれが出来ないのである。
各場面だけではなく、全体の枠まで考慮してこそ、監督の真の実力と言えるだろう。
まあ長尺が平気な人には良いかもしれない。
寝たい人にも良いかもしれない。
物好きにも良いかもしれない。
湿度70%くらいが好きな人にも良いかもしれない。
良い点
・バイリンガル
悪い点
・話がにわかに分かりにくい
・タバコ多め
良い作品と言うことのステイタスみたいな...
ちょっと、良く解らないです。
以前から、村上春樹さんの描く女性像が苦手ですが、今回も同様。
なんだか、うわっつらの格好つけーに感じちゃうのです。
家福も、高槻も同様。
夢みる夢男さんみたいだった。
とにかく、演出なのでしょうが、日本の役者さんたちに、
リアル感が無さすぎて、まったく入り込めなかったな…。
その点、ユンさんのナチュラルさが際立って、ものすごーく良かった。
この方の出演されてる作品を、もっと観たくなったもの。
これ、海外の方がリメイクされたのが観てみたいな。
そちらの方が違和感なく観れそう。
日本人ということで、より近い現実の日常と比べてしまうのよね...。
この作品の主要な登場人物たち人たちは、セリフまわしとか行動とか遠過ぎて、
そんなアホな!って思っちゃって…。
しいて言うなら、音楽が良かったなー。
3時間、人間を観てきた。
観終わってから原作が読みたくなりすぐに読みました。原作は短編だった...
脚本も役者も素晴らしい!!ただ、少し難しい。
正直、まだこの映画を自分の中で消化できていない。
こんなに長く余韻に浸っているのは久々かも。
3時間、あっという間だった。
もう一度見たい、何度も見たい。
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作中では、「演劇」が重要な役割をもつ。
劇中劇として「ワーニャ叔父さん」がでてくるが、この主人公が置かれている状況と家福(西島秀俊)の状況がだんだん重なってくる展開がおもしろい。しかもそれが自然なので違和感がない。
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そして、心情の変化や本心の吐露は、ほぼすべてが車のなかで起こる。車の走行と感情の変化が相乗効果を為して、この映画のなんともいえないスピード感をつくりあげている。
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自分が最も印象に残ったのは、イ・ユナ(パク・ユリム)の韓国手話でのお芝居のシーンである。
ユナの手話がすごく自分の心に届いた。
この映画は最初から最後まで「声」を大切にしている映画だと思うのだけれど、声を発さなくてもここまで心にセリフが届くんだというメッセージを感じた。
ふと、生き辛い世の中だなと感じることがある。生きていると、なんでかわからないけど苦しくなることがある。「ドライブ・マイ・カー」は、そんなときにそばにいてほしい映画だなと思う。
演劇を中心にすすんでいくので、演劇の知識がない私は、正直途中でついていけないところもあった。
演劇に精通しているともっともっと楽しめる作品なのだと思う。
『 トニー滝谷 』の続き
やはり原作は村上春樹さんの『 トニー滝谷 』という映画でナレーションをされていたのが西島さんでした。なんの予習もなしに続編を見るつもりで、映画館の座席に座ると配給会社がビターズ・エンド!ハッピーエンドが安心な私には不安な滑り出しでした。
海外で評価の高い映画を見れば、その時代の日本の良いところや悪いところそして当たり前だと気づかずにいること、それらが目の前に現れてそれだけでも面白いのですが、今回は野心的な監督とスタッフの皆様の試み、そして心地良い音楽が包んでくれる素晴らしいひと時を過ごすことができました。
そういえば、先週から練習しているピアノ曲で、先生から言われたことを思い出しました。「 風船が床に落ちて跳ね返る時の、あのふんわりとしたイメージで鍵盤を叩いてみて 」
感情の揺れはそんな優しさで丁寧にくるまれ届けられます。
ワーニャおじさん、生きていきましょう。長い人生を生き抜いていきましょう。そして最後の時が来たら、おとなしく死んでいきましょう。
原作とは別もの
村上春樹が大好きです。好きな作品の映像化を楽しみにしていました。賞もとったし。
しかし、これは原作とは全くの別ものです。
原作の静かな物語をぶち壊しにするようなセンセーショナルなエピソードが盛り込まれまくります。
せめて綺麗なシーンあればいいのに、それも全くありません。大きなスクリーンで見るってこと考えているのかなぁ。
“ヤツメウナギ”だの“空き巣に入ってマスターベーション”だの、意味ありげなキーワードは何なのでしょうか。これが文学的と思っているのかな。
岡田さんのかっこ良さと西島さんの胸板だけが素敵でした。
タイトルなし(ネタバレ)
異なる3つの短編小説と一つの戯曲を原作の持つ雰囲気を損なずに上手に組み合わせ、一つの作品として仕上げており、素晴らしいなと思いました。特に、最後の現実と劇の対比は非常に感動的でした。
もう一度見たいとは思わないし、誰にも薦めない
カンヌで賞もらったのは快挙ですが、そのバイアスを抜きにしたら、大した作品だとは思えなかったです
開始から1時間ぐらい、妻が死ぬ直前までは過去だから全部無くていいシーンです
監督もちょうどそこでスタッフクレジット入れたように、ただのプロローグでしかないと分かってるはず
プロローグに60分は長すぎます
最低限必要な情報だけは、あとで必要なタイミングで回想かセリフで挟めばよいだけ
西島がドライバーや岡田にセリフで長々と説明するんだから、説明がだぶついてるんですよ
セリフも抑え目なのかと思ったらやけに不自然な長ゼリフもたくさんある
ラスト付近のドライバーの生家前とか、カタルシスが氷解する一番良いシーンにしなきゃいけないはずなのに、二人して交互に長セリフで何を心情説明してるんだ?と呆れました
古典演劇をモチーフにしてるからか、村上原作だからか不明ですが、不自然なセリフ回しも多い
それに、セリフが無くても西島の内面、感情は読み取れているのに、カセットテープの声で西島の心情を説明するようなセリフを流す演出も不要
これが3,4回ありましたけど、マジかと思いました
これ、本当に脚本賞だったのか疑わしいです
それぐらい脚本クオリティが良くない
反対に邦画のダメなところはよく学んでる脚本でしたが
グランプリはあげられないけど、忖度で何かあげなきゃと思われた結果が一応主要賞の中で脚本賞だったような気がしてなりません
あと、冒頭の出資者、製作団体たちのクレジットや、途中にあったスタッフクレジットが目障りでした
カンヌ獲ったから誇らしくて、後から編集で足したクレジットだと思いますが、始まってすぐに出資者や製作団体の名前はストーリーを知る上で全く必要ない情報だし、スタッフクレジットも通常なら助監督とか衣装とか、そこまで末端のスタッフを単独表記しないものです
自分たちが関わったことを誇りたい気持ちは分かるがマジで邪魔でした
ドライブシーンの画とか、ほとんど無くても話は分かるし、本当は90分ぐらいに収まる話です
ぽんぽさんの言葉を借りると、脂肪だらけで感動させよう感が前面で出ていて良くない部類の映画です
1つだけ、必ずしも必要ではありませんが、日本人以外の人種や障害者が出ていたのはポリコレやマイノリティに配慮すべき時代に即していて良かったと思います
幾重に咀嚼できる作品、人間の命題を全うする二人の行方
原作未読。そして、初の濱口竜介監督作品。噂では聞いていたが、濃い…。3時間の長尺に耐えられるかの心配を軽々と飛ばし、心地よい映画体験へと誘ってくれた。
これまた批評するには言葉の足りようがない作品。映像的な説得力を兼ね備えながら、実は映画としては真逆のアプローチを踏んでいるのではないか。村上春樹原作なだけあり、言葉選びも容易ではない。それを補うような描写の明瞭さを見せたかと思えば、逆転した見せ方をしてくるような…。まだこれでも濱口竜介監督の中では観やすいと聞いたこともあり、思わずため息が出る。しかし、天才が拡張した空間が覗けるだけでも充分満足し、ある程度の説得力は感じているみたいだ。これを1200円で観たのが申し訳なくなるくらいに濃い。ただ、それを言語化できないのがもどかしい。
キャストも素晴らしい。西島秀俊の新たな表情を見たかと思えば、霧島れいかの美しい声に身を委ね、三浦透子の佇まいに息を呑む。また、岡田将生の不穏な空気に佇む誠実さは作品を強くしている。しかも、戯曲を演じる人というリアリティが同居しており、人の温度に触れていることへの安心感と恐怖が入り交じる。本作で描かれる、人の表裏とその受け手が抱く命題のような尊くも深いテーマを見事に描ききっている。
また、クルマも素晴らしい。長く愛されたサーブ900は二人の虚無感に寄り添い、新たな旅路へと走る。航空機メーカーらしい安定した走行性と頑丈なボディが二人の新たな道標へと誘う。また、高槻の乗るボルボV40にも注目したい。彼の理解し難い寄り添い方がクルマにも現れているとしたら、同じスウェーデンのボルボを選ぶのも納得がいく。彼はそれでも知りたいのだから。こちらは蛇足ではあるが、ヒュンダイ車が出てくるシーン。ネッソという燃料電池車がたくさん置かれているのだが、これが近々日本で販売を始めようとしている。その宣伝も兼ねているのかも…なんて勘ぐってしまう。それほどクルマにも魅力と意味を成しているような映画だった。
これから『親密さ』や『ハッピーアワー』、『寝ても覚めても』といった作品を観れると思うとワクワクしてくる。深い映画体験をより理解できるようになりたいなんて、つくづく思う。
赤い車とカセットテープの哀愁交差点
当初、上映時間180分と聞いて、
いやー、どこからしら簡略化できるでしょと思っていた。
長尺でありながら全体的に派手な場面転換はない。
特に後半は「舞台の練習風景」と「車中」の絵が大半。
さらに演技も誰もが心の内に隠し持つ喪失感を表したいためか
岡田将生以外の登場人物達は皆淡々としている。というか淡々としすぎている。
これだけ書くと飽きそうな要素が多いのだが、3時間はあっという間だった。
他人に愛車を運転されることに対し
かなり嫌悪感を抱いていた主人公が中盤
「まるで乗っているかわからないくらい丁寧」とミサキの運転技術を称していたが
まるで私も助手席に乗っているような感じで。
最初この作品を「ワォ!」と思いながら見ていたのに、なんともいえない作品の空気感にいつの間にかすーーっとのまれていた。
だが一方で、長尺で簡略化してほしいどころかこんなに長尺でも全て回収しきれていない印象もうけた。カンヌで脚本賞をとったのは字幕で見たほうが入り込みやすいのではないかという考察をみて妙に納得。
事前知識がなくても楽しめたが、原作や劇中劇の戯曲の知識などを知っていればさらに楽しめたことだろう。
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