「罪を乗せて走る赤いサーブ」ドライブ・マイ・カー td.mさんの映画レビュー(感想・評価)
罪を乗せて走る赤いサーブ
主人公の家福にとって、赤いサーブ900は過去と向き合うための密室でした。
亡き妻の声を流しながらセリフを覚える。誰も乗せたがらなかったその空間は、記憶と罪を保管する箱でもあったのだと思います。
しかし、運転手のみさきがハンドルを握ることで、車は彼の領域から共有空間へと変わっていきます。特に北海道への長距離ドライブは、過去の告白と共有の旅でした。
雪に埋もれた家の跡地で語られる罪は、赦しではなく共犯の確認。車はそのやり取りのすべてを載せて走ります。
この作品は、車というある種独特な空間を通して、人物の変化を描いているように感じました。そう考えるとまた少し違った物語が見えてきます。赤いサーブは、家福の手を離れ、みさきの手で未来へ進む乗り物に変わったのかもしれません。
「ドライブ・マイ・カー」、自分で車を運転する話かと思ったら、そうではなく、自分の車を運転させるお話だったのかな。
評価 ★★★★☆
コメントする