劇場公開日 2021年8月20日

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「罪を乗せて走る赤いサーブ」ドライブ・マイ・カー td.mさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 罪を乗せて走る赤いサーブ

2025年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公の家福にとって、赤いサーブ900は過去と向き合うための密室でした。
亡き妻の声を流しながらセリフを覚える。誰も乗せたがらなかったその空間は、記憶と罪を保管する箱でもあったのだと思います。
しかし、運転手のみさきがハンドルを握ることで、車は彼の領域から共有空間へと変わっていきます。特に北海道への長距離ドライブは、過去の告白と共有の旅でした。
雪に埋もれた家の跡地で語られる罪は、赦しではなく共犯の確認。車はそのやり取りのすべてを載せて走ります。

この作品は、車というある種独特な空間を通して、人物の変化を描いているように感じました。そう考えるとまた少し違った物語が見えてきます。赤いサーブは、家福の手を離れ、みさきの手で未来へ進む乗り物に変わったのかもしれません。
「ドライブ・マイ・カー」、自分で車を運転する話かと思ったら、そうではなく、自分の車を運転させるお話だったのかな。

評価 ★★★★☆

td.m
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