劇場公開日 2021年8月20日

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「村上春樹の読後と同じ気持ちになる」ドライブ・マイ・カー Zukkoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0村上春樹の読後と同じ気持ちになる

2023年1月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

村上春樹らしい、前編通して暗く重く、優柔不断な男が主人公。幼い子どもを亡くすという体験から、自分の中の深い感情を妻に対して表現することが出来なくなった男の物語。

感情を排した棒読みの台本読みは、演技上どんな意味があって練習に取り入れられているのか必然性が無いが
感情を表現出来なくなった男の演技指導としては象徴的。
それに、ドライバーみさきが最後に韓国に住む理由も全く分からない。

演技者が素晴らしいので、好きな題材ではないが、いつの間にか引き込まれた。

車内で、妻の音が他の男たちと寝ていたと家福から告げられ、それを認めるが如く、音が話した物語の続きを伝える岡田将生の目の演技が特に印象に残った。

村上春樹の小説は、感動すると言うより
心の中の暗い部分を嫌な感じに刺激してくる。
最後の終わりは、一応カタルシスを得るようになっているが、個人的にはそうは感じられず、嫌な気持ちが残った。
正しく傷つくことも出来ない、あるがままを受け入れることも出来ない…まだそんなところで留まっているのか、と思うので、自分の目を開かせてくれる作品ではないことも関係しているだろう。

これは、村上春樹の小説を読み終えた時の気持ちと同じ。その意味に於いても映画の出来は素晴らしいと言える。
モヤモヤと心の中のの嫌な部分を刺激してくる
村上春樹の小説通りのこの映画は、それゆえに大成功です。

Zukko