劇場公開日 2021年8月20日

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「世界中で観ていただきたい作品」ドライブ・マイ・カー さくらんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5世界中で観ていただきたい作品

2021年10月14日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

家福も音自身もわかっていたのか…
何故彼女は夫以外の男性と頻繁に関係を持つのかということを。19年前に4歳の1人娘を肺炎で亡くしてしまった喪失感、空虚感をSEXによって体を求めることでひたすら埋めようとしていたのではないかと思うのだ。でも、19年経っても彼女の心は止まったままなのだ。
夫婦はこのことについて向き合っていたつもりだったのだが何も解決していなかったのだ。
辛いことだから、触れないようにしていたのだろう。
小さな綻びは年月をかけ、確実に広がっていく。
でも、彼は彼女を本当に心から愛していた。
それは彼女も同じだった。
だからこそ、その他の男性との関係を問いただすことで彼女を失いたくなかったのだ。
失うことは自分が傷つくことを意味する。
結局、自分を守ったのである。
もしかしたら、彼女も彼に止めてほしかったのかもしれない。自分ではどうにもできない域に達していた可能性も大いにある。
だから、彼は自分が彼女を殺したと思っているのだ。
同じようにミサキも自分が母親を殺したと告白する。
死ぬことわかっていながら、助けなかったと。
お互いに自分の決断で自分の首を絞めていたのだった。
この車での旅は自分の気持ちに真正面から向き合うことを意味していた。
高槻に言われた言葉が確信をついていた。
自分自身を見つめることしかないと。
これが生きるってことの本質なのではないのか。

多言語、手話が飛び交う舞台稽古の様子を見て、
俳優という職業の過酷さ、私たち観客にはわからない努力の毎日があるんだなと思うと改めてこのように作品を拝見できることに感謝しかないです。

アカデミー賞日本映画部門ノミネートおめでとうございます。邦画とは思えない空気感が漂っていました。なかなかここまでの満足感がある作品には出会えないと思います。

さくらん