「無邪気な中年コンビに心をほぐされる」ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え! ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
無邪気な中年コンビに心をほぐされる
そこそこ昔からキアヌが好きだが、過去のビルとテッドシリーズは未観賞。ざっくりと過去作の予習をし、頭を空っぽにして観た。
そこには自由な地平が広がっていた…数か月前、「TENET」を真剣に鑑賞して頭を悩ませていた自分を一笑に付すかのようなお気楽タイムリープの世界。理屈っぽさと無縁な、堂々たるB級テイストに心の余計な力が抜けてゆく。
過去作の設定を知らないとすぐにはぴんとこない部分もあるが、分からないなりに見ていくうちに何となくノリで理解出来るし、付いていけなくなるほど入りくんだ話でもないのでシリーズ初見でも十分楽しめた。もちろん見ておくに越したことはないだろうが。
長いこと寝かされたシリーズものが復活する時、メインを張った俳優が旬を過ぎてイケてない感じになっていたり、ビジネス的裏事情があるのではと穿った見方をしたくなる場合が往々にしてあるが、本作にはそういう空気がない。
キアヌは長いキャリアの中で、コメディも若い頃を中心にこなしているものの、当たった映画はアクションものが多い。近年もジョン・ウィックシリーズで一世を風靡し、来年にはジョン・ウィック4とマトリックス4の同日公開も控えている。アクション俳優としてキャリアハイの最中にあると言っていい。
そんな50代にして今まさにイケてる彼が、何の説明もなく自然体で30年前のおバカ映画に戻ってきて、特に若作りもせず楽しそうにテッドを演じている。相棒のビルを演じるアレックス・ウィンターとは私生活でも長年の親友だ。何年たっても老けないと思っていたが、前作の映像を一緒に流されるとさすがに老けたなとも思う。そういったことまで含めて親近感と、間口の広さや自由さにキアヌらしさを感じ、尊敬の念すら覚える。どういう流れで30年前の続編を作ることになったか知らないが、ひたすら微笑ましい。
中年でも時には理屈を投げ捨ててバカになっていいんじゃないか…?そんな幻想で観客を自由にしてくれる、愛すべきB級映画。