「映画館で魅力がアップした」劇場版ツルネ はじまりの一射 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
映画館で魅力がアップした
タイトルの「ツルネ」は「弦音」(矢を放った時の音)なので、音が大切な作品だ。だから本作は映画館で観た方が輝く。内容自体はテレビシリーズの総集編だが、まとめ方が上手い。主人公の心の変遷にフォーカスを当てて、一本の映画として芯のある構成になっていて、散漫な印象は全くなかった。
主人公は、「弦音」の音に魅せられて弓道の道に進んだという設定だが、劇場の音響環境がそのことに説得力を与えてくれた。確かに、この音は映画館で聞くと魅力的だ。7.1chサラウンドの環境で鑑賞したのだが、後ろから前に飛んでいく弓の音の美しさを際立たせて、主人公が何に惹かれたのかを観客に説明するよりも体感させることに成功していた。
早気(はやけ)という弓道ならではの、技術的ではなく精神的な課題を中心にした物語を組み立てたのも、青春の成長ストーリーと上手くマッチしている。弓道は派手なスポーツではないので、ドラマの盛り上がりを作るのが難しそうな題材だが、見事にクリアしていた。緑をキーカラーにした色合いも優し気で心地よい。テレビアニメ2期も楽しみ。
コメントする