「デンマークにも自己責任論はあるのだろうか」ある人質 生還までの398日 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
デンマークにも自己責任論はあるのだろうか
何者にもなれない自分を抱えて生きるのは苦しい。そういう時に人は、蛮勇を出して大きなことをやってやろうと思ってしまう。本作の主人公の青年は怪我で体操選手の道を断たれた後に、カメラマンとしての道を歩み始めた矢先、シリアの戦場で誘拐される。まだジャーナリストと呼ぶほどの実績もなにもない「ワナビー」のような彼は、そこで地獄の体験をする。身を守る術もない彼のような駆け出しは誘拐犯にとって絶好の獲物だろう。
本作はISに人質にされた過酷な日々を赤裸々に描くと同時に、デンマークに残された家族が身代金を用意するため奔走する姿を描く。
デンマークは日本同様、テロリストに決して身代金を支払わないと決めている国だ。家族は寄付を募り、自力で身代金を用意する。デンマークの世論がその家族に対してどんな反応を示したのかははっきりとは描かれないが、苦悩に満ちた家族の表情が世論の厳しさを想像させる。やはり、デンマークにも自己責任論のようなものがあったのだろうか。
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