「12人の監督の創作熱溢れた『DIVOC-12』その中でも…」DIVOC-12 アッキーさんの映画レビュー(感想・評価)
12人の監督の創作熱溢れた『DIVOC-12』その中でも…
メイキング映像から期待していた、三島有紀子監督の『よろこびのうた Ode to Joy』
もう呼吸するのも忘れてしまうくらい期待以上の作品で、また一つ好きな作品が増えました。
《以下ネタバレ有り》背徳的な仕事をした後、ささやかな希望でもあったハーゲンダッツを食べるシーン。あれは、あの時に2人で一緒に食べたからこそ想像を遥かに超えた美味しさがあり、価値のある豊かで崇高な喜びに気づいてしまった(感じてしまった)んだと思いました。良くない事をした2人なのに、なんだかあのシーンは心の中がほっこりするような温かくて不思議な感覚に包まれ、親子のようにも見えるし、
良くない事をした後の2人なのに汚れていないというか、まるで付き合い始めのカップルみたいな妙な初々しさすら感じなくもなく、微笑ましかったです。
希望の大金を手にした冬海のもの悲しい複雑な表情に、抗えない世の常?普遍性⁇みたいなものを感じて、とっても切なかったです。
冬海の手から次々と舞ってゆく万札のように、即物的な喜びは得た直後からどんどんどんどん逃げてゆき、喜びと虚しさというアンビバレントな感情が隣り合わせでやってくるのであって、人や人の営みから生まれた真に心が震える喜びは、決して逃げていかない(心の中で生き続ける)ということを物語っているようで…。
だから、ラストで、散々カラオケで吐露して(この時の歩の物悲しい表情も切なかったです。)生まれ変わったかのような(真っ白になって真っ新な人生を生き直す決意をしたかのような)歩が、また砂浜に来て冬海に駆け寄っていくシーンが、たまらなく感動的で、観ている私まで嬉しくなってしまいました。
まるで真っ赤な血が巡り出したような強い動的なものを感じ、後光のような希望の光が差し込んできたようで、絵画みたいな美しさがありました。
“共有”から“感触”への架け橋になる見事なラストシーンにゾクゾクしました。
12人の監督の創作熱溢れた『DIVOC-12』
どの作品も短時間の中にぎゅっと濃縮されていて、宝の箱を開けたように贅沢で豊かな瞬間を沢山観る事ができ、心が大喜びしていました。その反面情報量も多く、まるで竜巻にあったような忙しさもあり、見落としている事も沢山あるような気もして、全作一気に観るのは勿体ないような気もしました。
今度は日めくりカレンダーのように、1作品1作品を大切に拝見してみたいなぁと思いました。
そして、私の推しDIVOC-12である三島監督の作品は、是非長編版としても拝見してみたいと思いました。