ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌のレビュー・感想・評価
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計算機
子育てに忙殺され好きな道を選択できず薬物依存症になった母親(エイミー・アダムス)と13歳で妊娠して故郷を捨てた祖母(グレン・クローズ)の複雑な母娘関係に、法学部に通うエリートタイプの息子の心情を絡ませて描いたホームドラマ。
それにしても、よくぞあの母親にして姉弟が立派になったもんだと、ある意味感心させられる。これも祖母の影響が大きいのだろう。
ラストは法律事務所の面接試験を息子が受けている場面。
生まれは変えられないが未来は選べるのだと言う。
結局、どうしようもない母親でも息子の人生に可能性という愛情を与えてくれたのは祖母であり、この母親だった。それをわかっていさえいれば息子が道を踏み誤ることはないということを教えてくれたのが今作品だったのではないだろうか。
家族の愛と信頼
イェール大学に通い弁護士を目指すビリー。
学費を工面するためにインターンに採用されることが必須の状況で明日10時からインターンの面接というタイミングに母親がドラッグの過剰摂取で病院に運ばれたとの知らせを受け故郷に戻る。その中で昔のさまざまな出来事が回想される。
一度負のループに入ってしまうと世代を越えて連鎖してしまう。抜け出そうともがいても上手くいかない。そんな中で、祖母の絶対的な愛と信頼が、道を踏み外しそうになったビリーを正しい道に引き戻す。家族の愛があるから甘えてダメになってしまうのかもしれない。でも家族の愛や信頼がなければ崩れそうな人を助けることはできない。愛と信頼の大切さを改めて感じた映画でした。
ひりひりして良かった。
本当にロン・ハワードか!?
2020年コロナ禍での新作洋画鑑賞は貴重なので期待しましたが、何十分経っても同じ調子でつまらなかったです。私も毒親育ちですが、共感するとか以前の問題で、全く没入できませんでした。ネトフリ×劇場公開作だと、感想ではなくて解説をびっしりと書く方が毎回大量発生し、文章が長すぎて読む気が起きませんし、もっと考えてやって欲しいです。また提灯ブログも複数存在していますが、会費は宣伝工作ではなく制作に回して、また積極的に制作に口出しして本当に少しでもクオリティを上げて欲しいです。
検尿に応じるか
この話では登場人物が数々の決断をするが、それは観てるこちらにも「お前ならどうするか?」と強いてくるようでもある。状況は切られるように痛々しく苦しい。身を投げるように行われる様々な判断。それぞれが家族のことを案じ、同時に自らをも思う。利己的ではない。自らの無事が、家族全体の幸福に資する自らが優先して守るべきことであるという現実的で誠実な解釈がなされる。ここまでの修羅場を越えて、何たる雄弁さか。
それを頷かせるだけの俳優陣の演技の凄まじさ。エイミーアダムスは、「これがあの!?」という風態で登場するが、ヒステリーに軽々と一線を超えさせるときのブレーキの壊れ方がたまらない。グレンクローズの病院から猫背で立ち去る様の異様さ、孫と正面きって電卓を取ってこいと挑む表情の鋭さなど、侍のようでもあった。
こんな不味そうな食い物を2人で分けるとは。500ドルでこまめにカードを使い分ける技などといった貧困演出も効いている。あの時ドアを突き破ってしっまったら!優秀な本人にも母親の影を潜ませる重要なシーン。トランプがあそこまでの票を取った。白人家族も現代的テーマなんだろう。
何者になるか
名門大学に通い、夢を叶えるチャンスの一歩手前まで来た主人公のもとに、薬物の過剰摂取で母が倒れたとの連絡が入り…。
しばしばヒステリーを起こし薬物に走る母親と、強くも娘に負い目を感じる祖母、そして、そんな家族に苦しめられながらも皆を大切に想う主人公を中心に描かれるドラマ。
希望の職に就けるかもしれない面接を控え、しかし故郷でまたしても問題を起こす母親。助け合ってきた姉に縋られ、故郷に戻る主人公。無事面接に辿り着けるか?
叶えたい夢と秤にかけるのは、少年期のつらい思い出の象徴ともいえる母親。
しかし、忘れてはならないのは、この母親は悪さはしながらも、確かにJDとリンジーの事は愛しており、祖母の力もあったとは言え育ててきた。
二人が母親を捨てきれない理由がちゃんとあると言うこと。
だからと言って許されることではないけれど、本人の言うように努力はしてきたんだろうなと。
ちょっとした努力すらできない人なんてごまんといるし。。
そしてなによりお婆ちゃん。責任を感じているからこそJDを厳しくも守ってきたのでしょう。劇中、何度もカッコいい姿を見せてくれましたよね。
あの状況から彼の元に向かうシーンはグッときました。
リンジーも、最初はJDに粗丸投げかよ!と思ってたのに急に、「採用されるかも」って…
いきなりカッコよくなりだして。ちゃんとお婆ちゃんの血引いているな。
皆、大なり小なり道を外しているけど、大事な家族なんですよね。それは冒頭の川のシーンでもよくわかる。
家族の形は様々、例え失敗をしてもそこで這い上がる努力ができるかが大事なわけで、お婆ちゃんが言う通り、最後に自分が何者になるかは自分自身が決めることなんですよね。
簡単に答えのでない問題に考えさせられるとともに、登場人物皆の奔走する姿に惹き込まれた2時間だった。
…カメの下りも実話なのかい(笑)!!
素敵だ。
それぞれのつらさ
既視感は覚えるものも実話ならではの力強さと毎度裏切られない名優二人の熱演に引っ張られる!!
監督ロン・ハワード × 主演エイミー・アダムス × グレン・クローズ = (明らかに!!)賞レース狙いの家族ドラマ。
ラストベルトの貧しい白人層を描くのはロン・ハワード監督らしい温かな眼差し、優しい手触り。手堅い作りでありがちなドラマに落ち着いている印象は拭えないけど、それでも実話だけあって役者の頑張りもあって力強い。何より、出演作で毎度素晴らしい演技を披露しては賞レースに絡んでいる印象すらある名優エイミー・アダムスとグレン・クローズは安定の圧巻っぷりで、それだけでも本作に見る価値を与えてくれる。
エイミー・アダムスが演じるのは向こうの田舎らしい気性の荒く薬物中毒な母親、毒親。グレン・クローズ演じる祖母も強く、二人揃ってパンキッシュ。子供時代にこんな目に遭っていたら普通にトラウマになりそうなくらい。ヘイリー・ベネットは本当よくちょくちょく見かける、ティーンくらいの若いときの娘役もまだ自分でしちゃうのか。すごくかわいいからまだいけるけど、何かのシーンで横顔映ったときに顎とかで少し年齢感じちゃったのはナイショ。
…だけど、正直類似した要素を持った作品だったら、本作より心に響いた良作名作は結構あると思う。今年見たもので言えば『ハニーボーイ』がすごく良かったしなぁ。
ケンタッキー州ジャクソン
売られた喧嘩は買え。助け合うのが家族の掟だった。10年、痔で苦しめ!ここが文明社会?パートナーが嫌な奴でついカッとなった、ニュージャージーのどこか。善と悪、そして中立のターミネーター。これで500ドル、これで1000ドル。僕の未来は家族の未来でもある
悪くはないんだけど
定番のアメリカファミリー物
映画のラストで実在のモデルが現在どうなっているのかを実写して終わるという定番のクロージングをします。
破天荒な家族に流されず、前向きに取り組んだ主人公のサクセスストーリーは所謂スタンダードと言うやつで、それなりに楽しめました。
家族、について考えさせられる作品
ディズニー映画「 魔法にかけられて 」で、愛らしい
ジゼル姫を演じたエイミー・アダムスが、愛してはいるものの時に激しく子供を叱責する薬物依存症の母親べヴを熱演。
煙草を吸いつつ、老いた身体を奮い立たせ、孫の J・D に努力をする事の大切さを説き、自立を促す祖母マモーウをグレン・クローズが熱演。
祖母の助けを借り、母親との軋轢を乗り越え、名門イェール大ロースクールに通う苦学生 J・D ・ヴァンスを
ガブリエル・バッソが、母親と弟 J・D を優しく気遣う姉リンジーをヘイリー・ベネットが好演。
グレン・クローズとエイミー・アダムスが、母親の逞しさを体当たりで演じられており、見応えが有りました。
エンドロールの笑顔溢れる写真を観て、実話だと初めて知り、感動がよりこみ上げてきました。それぞれが互いを思い遣る姿に胸が熱くなりました。
映画館にて鑑賞
本気の想い
2011年イェール大学に通い思い描いた職場への就職の面接を控えた前夜、食事会に出席する主人公に、母親がヘロインの過剰摂取で病院に運ばれたとの連絡が入り巻き起こっていく話。
オハイオで生まれ育ったけれど、心の故郷は祖母の故郷のケンタッキーという主人公が、14年前に少しの間夏を過ごしたケンタッキーから話はスタート。
オハイオの自宅に帰り、看護師の母親と暮らす姉と主人公、そして近くで暮らす祖母と、近くで暮らす祖父という少年時代と、2011年の話を織り交ぜながらみせていく。
ちょっとしたことでブチギレて、我を忘れて暴力を振るうし、男を取っかえ引っかえだし、ドラッグにも手を出す母親。
問題を起こすと二言目には努力した、努力したと言うけれど…。
そしてそんな母親に厳しいことを言う様だけれど、負い目からか直ぐに許して擁護してしまう祖母。
底辺で穏やかとは言えない暮らしから、名門大学に通えることになる要素がみえてくるどころか更に沈んで行く中、祖母が倒れたことが切っ掛けで変化が起きていく。
それでも最初はなあなあだったけど、自分の将来を本気で考えるてくれていることに気付き、大ケガする前に立ち上がった主人公も流石だし、テストの報告は涙もの。
2011年のパートも、自分だったら絶対に縁を切るだろうと思う程のワガママっぷりに辟易。
姉ちゃんも、なんだかんだとJ.D.を頼っており、見捨て様とする主人公を窘めておいて、自分はムリとかむちゃくちゃだなとは思ったけれど…。
コレが実話だというのだから驚いた。
婆ちゃんには感謝しかないし胸アツだった。
【”努力しないで、チャンスが来ると思うな!”負のスパイラルに引きずり込まれた母親と、彼女の息子がもがきながらも、明るい未来を追い求める姿を現代アメリカが抱える様々な問題を絡ませて描き出した作品。】
ー物語は、アメリカ南部の田舎町で育ったJ・D・ヴァンスの少年時代の家族や町の人々、友人との思い出と、現在イエール大・ロースクールで学ぶ成長したJ・Dが、薬物依存に陥った母親に振り回される姿とを、行き来しながら描かれる。
どのような状況であろうとも、強い絆で結ばれているJ・Dの三世代に亘る、様々な家族の姿と共に・・。-
■この作品は、観る側に現代アメリカが抱える様々な問題をぶつけてくる・・。
・・・だが、問題を抱えているのは本当に、アメリカだけなのであろうか・・。
<過去>
・J・Dの母ベヴ(エイミー・アダムス:役作りのためか、少しふっくらしている・・。過去の精神的に不安定な姿と現在の薬物依存に陥った姿を演じる姿は、凄みがある。)が、且つては学校で2番の成績で、看護師として働いていたのに、徐々に”道”を踏み外していく姿。
そして、自分の今の姿に苛立ち、子供達に当たったり、職場の薬物を飲んで”ハイ”になり、ローラースケートで病院内を疾走し、馘首・・。
シングルマザーで、長女リンジーと長男J・Dを養っているが・・。男を次々に変える不安定な生活・・。
ーはっきりとは、描かれないが、彼女が大学に行かなかったのは、”地域性”もしくは”進学費用”ではないかと推察する。
J・Dが自分の住む土地を説明するモノローグで語る”僕の町の近くには”ルート23”があるが、僕の町には通っていない・・。”ー
<過去>
・べヴの唯一の理解者だったJ・Dの祖父が亡くなるシーン。町の人たちが、帽子を取って慶弔の意を表する姿。
-貧しくても、多くの人は敬虔である・・。-
だが、べヴは荒れ・・、J・Dは祖母(グレン・クローズ)に育てられる事になる。
-この、祖母がべヴをきちんと育てられなかった責任を感じているのか、J・Dの周囲にいる悪友たちを追い払い、J・Dに対し、厳しく躾ける姿。最初は反抗するJ・Dだが、貧しい中自分を育ててくれる祖母の姿を見て、J・Dは心を入れ替えアルバイト、勉強に励む・・。
◆彼に新たなる人生の扉を開くきっかけを与えてくれたのは、貧しくも、厳しき祖母だったのだ!ー
<現在>
・イエール大・ロースクールで学ぶJ・Dは、さらに道を切り開くために希望する法律系事務所の面接を受けようとし、食事会で関係者とテーブルを囲むが、マナーが分からず困惑し、更に隣の男から、自分の家族を”レッド・ネック”と呼ばれ、激高する・・。
-彼の育ってきた環境で、ナイフとフォークを使って食事することはなかっただろうし、”レッド・ネック”などと、愛する家族を呼ばれては・・。
同じテーブルを囲んだ白人同士でも、”決定的な違いがある”ことを雄弁に描いているシーンである。-
<現在>
・べヴが、ヘロイン過剰摂取で入院したと連絡が入り、面接間近ではあったが、故郷に戻るJ・D。老いた母は相変わらず、病院で周囲の手を焼かしている。退院しても行くところのない母の姿・・。一時的に避難したモーテルで、再びクスリに手を出そうとする母親の姿・・。震える手を、息子に助けを求めるが如く差しのばす、べヴ・・。
姉、リンジーに助けを求め、深夜、彼女のウシャに電話をかけながら、面接に向かうため車を飛ばすJ・D・・。
<”ヒルビリー””レッド・ネック”・・:貧困白人層を指す蔑称。このような言葉を、裕福な白人層が平気で使う国、アメリカ。
薬物依存者の増加に歯止めがかからず、犯罪の低年齢化が進む国、アメリカ。
地域的な経済格差が広がり、一度セイフティネットからこぼれ落ちると、這い上がるには相当な努力と”運”が必要な国、アメリカ。
だが、この数々の問題は、アメリカだけなのだろうか・・。
日本も同じ道を辿ってはいないだろうか・・。
様々な事を考えさせられる作品である。>
■追記
今作は、ご存じの通り、NETFLIX製作の作品であるが、イオンシネマは「ROMA/ローマ」以降、短期間ではあるが、NETFLIX製作の作品を劇場で掛けてくれる。
実に有難い事である。
感謝を申し上げます。
家族の一つの形
近年この作品のように完璧じゃない家族の姿を描く作品はいくらかあり、目にしたきたが、
この作品もまたそのタイプでは非常に見応えあり、この家族の形に没入し作品を楽しむことができた。
エイミーアダムス演じるベヴは理想の母親とは程遠い姿である。彼氏や父親を頻繁に変え、その度に子供達は引っ越し環境を変えることを強いられる。
時には子供に暴力を振るい、時には自分を傷つけて近隣に迷惑をかけたり、そして薬漬けになったりと一言で言えば最低な母親である。
でもそんなベヴも昔は学校でも優秀な生徒の1人であり、明るい未来を夢見て順風満帆な生活を送っていたという。どこか歯車が狂ったり、ベヴ自身も両親の暴力下の中育った過去のトラウマがベヴを狂わしてしまっている。
そんな壊れかけたベヴがまともな教育を子供達にする事はできない。
長女は早くに恋人を見つけ彼と生活をすることで独り立ちした。
主人公のJDはまだ幼い事もあってベヴに振り回されて苦しんだが、最後は祖母が母親代わりになる事となり、そんな必死に自分の世話をしてくれる祖母の姿を目にして立派な人間になることを強く心に決め今に至る。
今のJDは立派な社会人である。姉も家族を持ち幸せな様子が伺える。
そんな彼らにまた母親のトラブルに巻き込まれてしまう。子供たちは自立してるが、母親はまだその日暮らしの生活を送っており自立できておらず、歯車は狂ったままだ。
JD達も見捨てようと思えばできる立場であるが、ベヴの過去の事は理解、庇う事はできなくても、過去の事を赦し支え合う姿を過去の描写と繰り返しながら丁寧に描かれた作品である。
改めてこの作品をみても家族の形はそれぞれだという事を実感させられる。完璧な家族などもしかしたら存在しないのではないか。それぞれ色んな問題を抱え、そして解決できないままであるかもしれない。
ただこの作品を見ていると完璧ではないこと、問題を抱えてる事を恥じるのではなく、例え時間を要してもゆっくりゆっくり理想の姿を追っていく事も悪い事ではないと実感させられる。
ある程度の年齢を迎えてしまうと家族といえど共に過ごす事はなくなり、関係を断つ事もできてしまうのも現実である。
ただこの一家のように幼少期は一般的な家庭のような時間を過ごせず苦しみはしたが、時間はかかっても最後は幸せな家庭を築くのまた家族の一つの形であり幸せな事だととても実感させられた。
この作品においては家族の形というものにスポットが当たっているがもちろん他のことにも置き換える事は可能だ。
人間誰しも完璧な姿や理想な姿を夢見る。その思いが強ければ強いほど現実と理想の差に絶望し壊れてしまう事もある。
人間誰しも壊れる事もあり、逃げ出す事もある。壊れたから、逃げたからもうダメなのではなく、人生は短いようで長くもある。人よりも遠回りをしたとしても夢や理想を諦める事なくゆっくりゆっくりと自分のペースで向かう事の大切さを改めて感じさせてくれる作品であった。
今年もいろんな映画作品を見てきたが、自分にとってはトップクラスに好きな作品であった。
どんな家族にも歴史がある
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