「【”努力しないで、チャンスが来ると思うな!”負のスパイラルに引きずり込まれた母親と、彼女の息子がもがきながらも、明るい未来を追い求める姿を現代アメリカが抱える様々な問題を絡ませて描き出した作品。】」ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”努力しないで、チャンスが来ると思うな!”負のスパイラルに引きずり込まれた母親と、彼女の息子がもがきながらも、明るい未来を追い求める姿を現代アメリカが抱える様々な問題を絡ませて描き出した作品。】
ー物語は、アメリカ南部の田舎町で育ったJ・D・ヴァンスの少年時代の家族や町の人々、友人との思い出と、現在イエール大・ロースクールで学ぶ成長したJ・Dが、薬物依存に陥った母親に振り回される姿とを、行き来しながら描かれる。
どのような状況であろうとも、強い絆で結ばれているJ・Dの三世代に亘る、様々な家族の姿と共に・・。-
■この作品は、観る側に現代アメリカが抱える様々な問題をぶつけてくる・・。
・・・だが、問題を抱えているのは本当に、アメリカだけなのであろうか・・。
<過去>
・J・Dの母ベヴ(エイミー・アダムス:役作りのためか、少しふっくらしている・・。過去の精神的に不安定な姿と現在の薬物依存に陥った姿を演じる姿は、凄みがある。)が、且つては学校で2番の成績で、看護師として働いていたのに、徐々に”道”を踏み外していく姿。
そして、自分の今の姿に苛立ち、子供達に当たったり、職場の薬物を飲んで”ハイ”になり、ローラースケートで病院内を疾走し、馘首・・。
シングルマザーで、長女リンジーと長男J・Dを養っているが・・。男を次々に変える不安定な生活・・。
ーはっきりとは、描かれないが、彼女が大学に行かなかったのは、”地域性”もしくは”進学費用”ではないかと推察する。
J・Dが自分の住む土地を説明するモノローグで語る”僕の町の近くには”ルート23”があるが、僕の町には通っていない・・。”ー
<過去>
・べヴの唯一の理解者だったJ・Dの祖父が亡くなるシーン。町の人たちが、帽子を取って慶弔の意を表する姿。
-貧しくても、多くの人は敬虔である・・。-
だが、べヴは荒れ・・、J・Dは祖母(グレン・クローズ)に育てられる事になる。
-この、祖母がべヴをきちんと育てられなかった責任を感じているのか、J・Dの周囲にいる悪友たちを追い払い、J・Dに対し、厳しく躾ける姿。最初は反抗するJ・Dだが、貧しい中自分を育ててくれる祖母の姿を見て、J・Dは心を入れ替えアルバイト、勉強に励む・・。
◆彼に新たなる人生の扉を開くきっかけを与えてくれたのは、貧しくも、厳しき祖母だったのだ!ー
<現在>
・イエール大・ロースクールで学ぶJ・Dは、さらに道を切り開くために希望する法律系事務所の面接を受けようとし、食事会で関係者とテーブルを囲むが、マナーが分からず困惑し、更に隣の男から、自分の家族を”レッド・ネック”と呼ばれ、激高する・・。
-彼の育ってきた環境で、ナイフとフォークを使って食事することはなかっただろうし、”レッド・ネック”などと、愛する家族を呼ばれては・・。
同じテーブルを囲んだ白人同士でも、”決定的な違いがある”ことを雄弁に描いているシーンである。-
<現在>
・べヴが、ヘロイン過剰摂取で入院したと連絡が入り、面接間近ではあったが、故郷に戻るJ・D。老いた母は相変わらず、病院で周囲の手を焼かしている。退院しても行くところのない母の姿・・。一時的に避難したモーテルで、再びクスリに手を出そうとする母親の姿・・。震える手を、息子に助けを求めるが如く差しのばす、べヴ・・。
姉、リンジーに助けを求め、深夜、彼女のウシャに電話をかけながら、面接に向かうため車を飛ばすJ・D・・。
<”ヒルビリー””レッド・ネック”・・:貧困白人層を指す蔑称。このような言葉を、裕福な白人層が平気で使う国、アメリカ。
薬物依存者の増加に歯止めがかからず、犯罪の低年齢化が進む国、アメリカ。
地域的な経済格差が広がり、一度セイフティネットからこぼれ落ちると、這い上がるには相当な努力と”運”が必要な国、アメリカ。
だが、この数々の問題は、アメリカだけなのだろうか・・。
日本も同じ道を辿ってはいないだろうか・・。
様々な事を考えさせられる作品である。>
■追記
今作は、ご存じの通り、NETFLIX製作の作品であるが、イオンシネマは「ROMA/ローマ」以降、短期間ではあるが、NETFLIX製作の作品を劇場で掛けてくれる。
実に有難い事である。
感謝を申し上げます。
NOBUさんへ
妹がブライアン・フェリー派だったBloodです。ワタクシはボウイ派ですw
ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターは、ほんのちょっとだけ上の世代です。私はYes/EL&P/Pink Floyd/King Crimsonなどがアイドルの、数年だけ下世代です。
そろそろ公開されるはずの"DUNE"で、Pink FloydのEclipse("狂気"の最後の曲)が大々的に使われてますが、オリジナルじゃ無いんですよねぇ。Re-Mixで良いのに、って思ってますw
NOBUさんへ
コメント有難うございました!
ブッククラブは未だこちらでは上映されてませんが、チェックします。ボウイは、ここのところ映画の中でチラホラ流れてますが、ロキシーは全然ですねぇ。ブライアン・フェリーは、今流に言うと、影響力の大きいインフルエンサーだったと思うんですが、映画で使うにはクセが強すぎるんでしょうか。個人的にはプログレが聞きたいですw
NOBUさんへ
いつもお世話になっております。もしかして、ダニエル・ペンバートンのことでしょうか?
スパイダーバース以来、一番のお気に入りなんです。シカゴ7の、暴動に至るまでの音楽での盛り上げ方とか最高にカッコ良いですw
NOBUさん
コメントへの返信有難うございます。
お二人共、演技には見えない程、でした👀
J・D を演じたガブリエル・バッソも、初めて見る役者さんでしたが引き込まれました。