KCIA 南山の部長たちのレビュー・感想・評価
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イ・ビョンホン?誰かに似ている
憂国の薬缶ステア
1979年10月26日に朴正熙を殺害した中央情報部部長金載圭を主人公に、事件までの40日間を描いたフィクション。
歴代大統領がことごとく憐れな末路を辿る韓国において、前大統領朴槿恵の父親にして任期中に暗殺された朴正煕の強権ぶりと、同郷で旧知の関係に有り側近でもあった金載圭が不信感を募らせ、プレッシャーをかけられ、行き詰まっていく様は、正にサスペンス。
近代韓国史に詳しい訳ではないので、どこまで事実かはわからないけれど、とてもスリリングでエンタメとしてとても面白かった。
ただ、冒頭でフィクションである旨の字幕はあるものの、結構シリアスに現実っぽく描かれているし、上書きが得意なお国柄もあるし、これが事実として誤認されていきそうでちょっと怖い。
韓国の「本能寺の変」
外見的には全然似てないのに、キム部長役のイ・ビョンホンと、朴大統領役のイ・ソンミン、クァク警備室長役のイ・ヒジュンの三人のなりきり演技には圧倒されました。
実に面白い、近代ドラマとして楽しみました。
『タクシー運転手 約束は海を越えて』『1987、ある闘いの真実』などに見るように、そろそろ韓国では、軍事政権時代の出来事を過去とみなし、一種の時代劇へと昇華しているような気もしました。
わずか40年前くらいのことではあるのですが(軍事政権時代を嫌悪してる人も多いのかも)。
本作も実録ものと言いながらも、エンタメ的な切り取り方が目立ち、フィクションの部分が多かった印象です。
犯人のキム部長(=モデルの金 載圭)に対して同情的で、参加していないはずの1961年「5・16軍事クーデター」に朴正煕と共に参加していたように改変され、憂国の士のように描かれていました。
キム部長の姿が、最近のNHK大河『麒麟がくる』で、(本能寺の変へと連なる)明智光秀の信長への殺意の積み重ねと、ダブって見えたりしました。
また、暗殺された朴正煕元大統領については、経済成長を成し遂げた人物という側面には触れず、民主化運動を弾圧し、お気に入りの役人だけを贔屓し、国家の金を横領した独裁者という部分のみを強調していました(長期政権後半の腐敗具合はあながち間違ってはいないようですし、経済成長自体が政府発表のまやかしという説もあるようですが)。
犯行動機については諸説ある中、ドキュメンタリー原作者や、監督・プロデューサーの恣意的選択が入るので、犯人その人でもなく、その時代にその場所にいなかった神ならぬ我が身には何が真実かはわかりかねますが。
ただ、先に例に挙げた明智光秀や、その後世の中を簒奪した豊臣秀吉、幕末の維新志士や新選組らが、魅力的人物として描かれるのと同じように、(世が世ならテロリスト同然にもかかわらず)歴史の大きなうねりを生んだ人物は、ドラマになりやすいのだなと。
この基になった事件自体、韓国版の「本能寺の変」みたいなもんだし。
さらに、これが韓国でヒットした背景には、最近判決のおりた娘の朴槿恵元大統領への国民の憎悪に近い反感が、その父・朴正煕にも向けられたのではないかと思ったりもしました。
ヤクザかマフィアの抗争?
パクだのキムだの同じような姓が出てくるので肩書つけないと混乱。
面白いのだが、喋りが多いので、前半は眠気が襲う。
そんなこんなで、少しカオスの頭の中を整理しながら、中盤から後半にかけてはじっくり鑑賞しました。
大統領が暴徒化した民衆は戦車で轢き殺せばいいみたいなこと言ってたが、”政府のやることに文句言うな”って言ってたどこかの政治家と被る。
国民ありきの政府なのに、国民を虫けらみたいな扱いにしちゃいけません。
南山へ行っていたら、また違ったのかなぁ?
韓国現代史の重要局面を緊迫感たっぷりに描く
KCIA部長による朴正煕大統領の暗殺事件を描いた、実話ベースの物語。
朴大統領をアメリカで告発した前部長への対応から始まり、側近たちが騙し合い、大統領に媚びを売りながら勢力争いをする姿はとても面白かった。さらにアメリカの意向も絡んでいく、深みのある脚本だった。
最終的に大統領を殺害することは事実なので、そこまでの持って行き方が映画としての見せ所。そういう意味では地味ながらとても緊迫感のあるシーンの連続で飽きさせない作りだった。
朴正煕による軍事クーデターから18年。長期の独裁政権による腐敗が進み、崩壊すべく崩壊した朴正煕政権なのだが、大統領やその側近たちが自ら起こしたクーデターを革命と呼ぶ姿は恐ろしくも滑稽だった。そして、大統領殺害から半年ほどで次の軍事クーデターが発生、光州事件(「タクシー運転手」の背景)に至るという悲しい史実が待っている。あー、あいつが全斗煥なのかなと思わせて終わるのも憎い演出だった。
「大統領の理髪師」→本作→「タクシー運転手」→「1987、ある闘いの真実」と連なる、現代韓国を紐解く名作がまた1つ生まれた。
革命後、現実の後始末
ファシズムとハードボイルドワンダーランド
#08 李氏朝鮮時代から変わらぬ韓国
王様だろうが大統領だろうが権力者に媚びることで自分の立場を築く韓国人の姿は、王朝時代と何ら変わらない。
なんなら現在も社長が通るとお辞儀をして待たなきゃいけない、あの考え方はついていけない。
全然民主化されてないじゃん。
と言うことでこの映画はそんな韓国の大統領を暗殺するまで追い詰められた中央情報部長が主人公です。
もしこの暗殺方法が事実だとしたら、本当に大統領になるために暗殺したんじゃなくて突発的判断で暗殺したんだろうな。
唯一登場する女史の役目が何なのかよくわからなかった?重鎮接待係?
一応民主主義国家ということで北朝鮮と違う国にはなってるけど、人間の根本に根付く意識は漢江の奇跡のように短期間では変わらないのです。
日本人だって未だに江戸時代の藩政の習慣や意識が根付いてるんだから。
韓国らしい重い政治サスペンスドラマ
韓国で2020年の年間興行収入1位の大ヒット作品らしいです。しかも「パラサイト 半地下の家族」に続いて、本年度のアカデミー賞で韓国代表作に選出されています。
韓国で1979年10月26日に実際に起きた朴正煕大統領暗殺を基にしたイ・ビョンホンが主演シリアスなサスペンスドラマ。
顔のアップの会話シーンが多いですが役者が上手なので見入ってしまいます。
国家権力を握った韓国中央情報部トップたちが拳銃を突きつけるほどの怒号や怒鳴りあいなど、かなり生々しいやり取りが続きます。負けが決まるまでは熱く口論で戦い続ける韓国の国民性が理解できます。
娯楽作品としてはかなり重い作品ですが韓国の歴史に興味があればご覧ください。
末路と覚悟
今から40年前ごろに起きたお隣の国のできごと。日本も考えないと。
今年13本目(合計80本目)。
事件自体は事実ですが、その動機が色々謎であることから真相解明という観点には程遠く、この事件自体は去年(2020年)に本国韓国でも高い評価を受けたように、「事件は事件として扱い、一方で不明な点はできるだけ両者(被害者・加害者側)にフェアになるように書く」というようになったようです。そのため、韓国でも大きなトラブルは起きなかったようです。
さて、この映画自体で扱われている事件「それ自体」は史実です。ただ、射殺に至る動機がよくわからないとされているのです。
またこれに輪をかけたのは、射殺に成功すれば当然本人は逮捕されますが、そのあとの軍法会議での絞首刑の言い渡し、執行が1980年5月と、事実上7か月ほどしかなく、この手の事件では「主要な共犯者がいる場合、その共犯者の全ての裁判を終わらせないと死刑にしない」というルールが必ずしも厳格に適用されていなかったようです(それよりも、新しい大統領での再出発を早く優先したかった模様)。このため、いわゆる取り調べ等の証拠も不十分であるようで(軍法裁判所であったことから)、さらに「期間が短すぎる」状況から、収監後、本1冊も書かずに処刑されており、思想を窺い知ることもできなくなってしまっている、という状況がこの問題を複雑にしています。
要は他の方も書かれていたことですが、「政治は部屋の中ではやってはいけない」(=そこは政治をする場所ではない)こと、さらに付け加えるなら、「将来の自国の歴史に刻まれるようなできごとであるなら、短時間でものを決めてはいけない」ということでしょう。
あまりにも早く収束させてしまったため(大統領の交代に変わって、前のことは前のこと、でさっさと終わらせなかったという意図は不明)、もう今となっては「こういう説もある」というようなものしか今は出せないのだそうです(その中でも、一つこういう説がある、というのが今回の例で、「まぁそれならありって言われたらあり?」というので韓国ではどちらのサイドからもあまり批判は起きなかった)。
確かに日本においても、天使ともに許さない極悪非道な事件も起きますが、それも適正な刑事手続き、適正な裁判(正しい審級の利用、攻撃・防御権の利用等含む)を経た事件であれば、そこから「どうしてこのような事件が起きてしまったのか」ということを後から検証することができます。
日本でもときどき、オウム真理教レベルの事件ほどはいかないにせよ、日本を震撼とするような大きな犯罪が起きることがありますが、そのときもこの原則なのです。それを「極悪義堂だから裁判権なんてやる必要はない」とか、「弁護士が被告をかばうのは許せない」とか言い始めると、こういう震撼とさせた事件…(日本では、今回のように大統領の交代を招いたという事件とは「比較の対象規模」という観点では到底くらべものになりませんが、例えば、京アニの事件であるなどは理解されやすい)については、一時の感情だけで「さっさと死刑にすりゃいいでしょ」という人も確かに多いのですが、そうすると「あとからの調査」は事実上できなくなってしまいます。死人は話さないからですね。
このあたり、日本も「加害者側の最低限の人権も意識しない」風潮がしばしば見られるだけに、今回の映画では「援護射撃」的な関係にはなりましたが、韓国におけるさらなる発展をねがんでもやまないところろです。
減点対象は特にないので、5.0のままとしました。
まぁ、あえて言えば、この事件「そのもの」は事実なので、前日ないし、最悪、見に行く当日に百科事典や国語辞典などで調べておくと良いのかな、とは思いました(理解度が多少変わってきます)。
国家トップ3があんな感情的なのね
実話が元のサスペンス。私は事前には勉強しないで行ったので、展開に興奮しました。これが約40年前の韓国なんですね。
ちなみに、あくまでサスペンスです。結論が暗殺という初めにあってそこまでの経緯をおっていくので、予備知識なしでも楽しめると思います。
強いていえば、同じような名前だらけで、日本人には混乱します。
予備知識があった方が良いという意味では、朴大統領のWikipediaくらいは読んで行った方が良いかと。そうすると、キャラクターに深みが出て、悪人なのか偉人なのか、その両面がわかると思います。
池上さんの番組みても思いましたが、当時は北朝鮮の方が経済的に豊かで、朴大統領の時に、日米の援助で経済発展させたくらいの偉人のはずなのですが、やっぱり軍事政権ってのが問題あるのかな。
通して、国のTOP3がここまで感情で物事を決めていた事に驚き。あんな感情に流されて、冷静に判断出来ない人がリーダーだと、戦争もおきますね。
今も変わらないかもしれませんが。
また、韓国人の「恨」の大きなこと。歴代の大統領のその後の有罪率は考えられない。
さらに言うと、朴大統領の娘がまた大統領になってるのも驚き。
結論、韓国人って本当に一時の感情で物事を判断するのだと、思い知らされました。
映画としては、とても面白い。緊張感や、心が動くシーンは惹き込まれます。ヒリヒリする空気感はとても良い。
韓国で、2020年1位も納得。
義憤というより私憤
コリアン・ゲート事件に関わっていたKCIAの前情報部長の存在を疎ましく思った朴政権だが、朴大統領を忖度した、イ・ビョンホン演じるキム情報部長が、前情報部長をパリで暗殺する。しかし、この暗殺を朴大統領は快く思わない。むしろ前情報部長が持ち逃げした米国での工作資金が戻ってこないことを嘆く。朴大統領のために無理をかつての同僚という馬謖を切ったというのに、その行為が評価されず、朴大統領は権力の維持することだけを考えるようになっている。ここがドラマの中心の線としてあるのだと思う。
キム情報部長は終始板挟みになっている。朴大統領を切りたいと考える米国側からの圧力。戒厳令を敷き民衆の鎮圧に血道をあげる朴大統領はキム情報部長と距離を置き始める。その中で戦車を街中に走らせるパフォーマンスで朴大統領の関心を引く警備部長。警備部長と情報部長の対立は青瓦台の中で銃をつきつけあうほどの激しさだ。
朴大統領暗殺事件は、中学生の頃の自分を驚かせたニュースだけれど、結局、その背景は判決通り、どろどろとした私憤と考えるべきだろう。未遂に終わったクーデタはどうみても、衝動的なもので綿密に計画されたものではなかった。朴大統領を娘朴槿恵の前で暗殺した後のキム情報部長のうろたえ方は尋常ではない。この辺はイ・ビョンホンの演技が非常に巧かったと思う。
この映画は、政治サスペンス映画と区分されるけれど、私は男同士の間にある愛憎の心理劇であると思った。朴大統領に暗殺に大義はない。情報部長として同僚だった前情報部長をを暗殺したことは、KCIAのトップとしての冷徹な裏仕事と言えたかもしれない。野党の政治家をしょっぴいて拷問にかけることもしている。しかし、その行為が上司に認められなかったことで、キム情報部長の行動も冷静さを失ってしまう。やはり朴大統領暗殺はどうみても私憤と言えるだろう。
前情報部長はキム情報部長に「オセロ」のイアーゴの存在を明かす。このイアーゴが大統領の資金洗浄に関わっていると告げるのだけれど、イアーゴはオセロ王を罠にはめて、妻に対する嫉妬に苦しめた人物である。最後にオセロは凶行に走るわけだが、このドラマはまさにオセロ的な嫉妬がうごめく内容になっているのだ思う。
イ・ビョンホンの苦虫をかみつぶしたような苦悶の表情の演技は非常に良かったと思う。また、朴大統領をイ・ソンミン(「工作」で北朝鮮側の幹部を好演)、前情報部長をクァク・ドウォン(「アシュラ」の検事役)という演技派が支えているのがいい。陰鬱なトーンの続く作品だが、最後の歴史的事実へのつなぎ方も、軍事体制の継承という陰鬱なオチとなっている。
「1987」、「タクシー運転手」、「工作」など、最近の韓国映画の政治サスペンスにハズレなし。
あの丸顔の禿頭に見覚えが
下手なフィクション物なんかより遥かに見応えがあった。なぜ朴正煕大統領の腹心中の腹心が大統領を暗殺するに至ったか。イ・ビョンホンの演技が観客に答えを提示してくれる。それぞれの家族が登場しないので、感情の視点がぶれることなく緊張感を保ったまま終幕する。
KCIAのキム部長は、軍事クーデター(キム部長は革命と呼んでいる)当時、クーデターのリーダーであった朴正煕と生死を共にしていたこともあって、朴大統領からの信頼も篤く、キム部長自身も大統領を尊敬し、汚れ役を信念を持って全うしていた。
KCIAの前部長のアメリカ議会の公聴会での証言を阻止できなかったことから、キム部長に対する大統領の信頼が揺らぐ。そこにイエスマンかつ太鼓持ちである警備室長が大統領に擦り寄って行き、権力を持つようになる。ここからが、イ・ビョンホンの表現力の凄さで、苦悩と葛藤がこちらにひしひしと伝わってくる。感情を押し殺そうとしても体が震えてしまう。
ここからは、史実だけどネタバレになるかも
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朴大統領は、強権的であるが間違いなく韓国を経済的に発展させ、アメリカの言いなりにはならない小強国に導いた。その大統領を影で支えてきたキム部長が、大統領から遠ざけられ、権力を徐々に剥がされていく。そして、大統領の不正蓄財を担当している謎の腹心の存在がキム部長を疑心暗鬼にさせる。
暗殺実行後の行動は、本能寺の変の明智光秀を思いこさせる。軍部やアメリカへの事前の根回しをほとんどしておらず、決行後の行き先も逡巡して即答できない。結局は、アメリカの捨て駒にされてしまった。
あの丸顔の禿頭、どこかで見た覚えがあると思ったら、エンドロールで腑に落ちた。
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