「暗殺を正当化する様な映画は本来良くないと思うのだが、こんな映画よく作れたなと、興味深々で見てしまう自分がいる」KCIA 南山の部長たち Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
暗殺を正当化する様な映画は本来良くないと思うのだが、こんな映画よく作れたなと、興味深々で見てしまう自分がいる
ウ・ミンホ 監督による2019年製作(114分/PG12)韓国映画。
原題:The Man Standing Next、配給:クロックワークス。
朴正煕大統領が暗殺された事件自体はぼんやりと記憶にあるのだが、KCIAトップが実行犯人であったとの認識は無く、この驚くべき本事件の背景を描いた本映画を、大いなる興味を持ちながら視聴できた。
事件は1979年10月26日。射殺の実行犯人で死刑となるKCIA部長キム・ギュピョンを韓国トップスターイ・ビョンホンが演じていることに、まず驚かされる。
朴大統領の独裁者としての圧政は有名であるが、この映画でも自分に逆らう民衆は殺しても良いと言った大統領のセリフが頻発し、KCIA部長の行いに同情出来る描かれ方となっていた。「いつでも君の側にいる。君の好きな様にして良い」という大統領の部下への狡い言葉も、凄く印象的。
娘の朴槿恵大統領が罷免(2017)された後に作られた映画とは言え、経済発展させたと評価する人間もいる大統領の言行をここまで辛辣に踏み込んだ描写にも、日本映画との比較でかなり驚かされた。
まあ理性的には、テロで大統領を殺害した犯人の行為を正当化する様な映画は民主主義を信奉する立場からは強く否定すべきとは考えるが、ただ何故殺したのかはとても知りたいところで、それに応えたものではあった。単純な正義心からだけでは無く、ライバルへの嫌悪感や自己排除への恐怖、そして憎しみも感じさせられた点では、多少の客観性は感じられた。
監督ウ・ミンホ、原作キム・チュンシク、脚本ウ・ミンホ イ・ジミン、
撮影コ・ラクソン、美術チョ・ファソン、音楽チョ・ヨンウク。
出演
キム・ギュピョンイ・ビョンホン、大統領イ・ソンミン、パク・ヨンガククァク・ドウォン、イ・ヒジュン、キム・ソジン。
劇場公開日:2021年1月22日
> 辛辣に踏み込んだ描写も日本映画との比較で驚かされた
同感です。圧政から民主主義を勝ち取った自負が全国民の潜在意識下にあるからなのでしょうか。この類の映画では、全く敵わないですよね。