「主人公は英雄か?それとも・・・」KCIA 南山の部長たち DEPO LABOさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公は英雄か?それとも・・・
権力と暴力で圧政を行う朴大統領が統治していた韓国。
直属の部下である主人公のキム部長は、朴大統領の圧政をアメリカに告発した友人の監視・処理を命じられる。
大統領に忠誠を誓い、任務を全うした主人公だが、どんどん組織内で孤立していき、ついには大統領に見放される。
そんな報われない主人公が、
大統領を暗殺した理由に迫るお話。
以下ネタバレ気味
▼ポスターのキャッチフレーズにあるような、「なぜ」そうしたのかが、100%スッキリ明らかになるわけじゃないのが良い。
▽観る人によって微妙に印象が違うのではないか
▽殺したくもない友人を殺させといて人殺し呼ばわりされた怒り?、組織で孤立していく上で保身のため?国民第一の革命を遂行するため?
▽次の大統領のポストを期待していると仄めかされて友人まで殺してしまうあたりをみると、大統領になりたかったのではないかという説は100%は否定できないのではないか
▽じゃあ革命を遂行する正義のためか思うと、物語冒頭で、「そもそもなぜ革命をしようと思った?」というパク部長の質問に、質問返ししてしまう始末。
▽それでも映画ラストの証言では革命が動機だとして証言している。
▽物語を振り返ると、矛盾が散見されるというのがこの映画のおもしろいところだと思う。
▽つまりこの映画には、コレ!という「なぜ」に対する答えが提示されない。
▼主体的な動機がない、「イタコ」的な主人公のキャラクター。
▽「そもそもなぜそれを始めたの?」なんて質問をされれば、人はとっさに何かしらのそれっぽい理由を語る
▽でもほんとのところ理由なんてもんはなくて、気づいたら今の状況になってるってことはわりとあるんじゃないか
▽つまりは主人公には、もしかしたら、主体的な動機というか信念みたいなものはなかったのではないか?
(もしかしたら登場人物みんなそう?いや観客もそうなんじゃない?)
▽ただ目の前のことをただ無感情に処理してきた主人公は、誰かを自分に憑依させることで、誰かの受け売りで生きてきた。
▽朴大統領の意のままに分身のように生きてきた自分に疑問を感じたきっかけは、友人の死。
▽無感情に生きてきた主人公は、ここでようやっと感情が発動する。
▽しかし、自分の動機というよりかは、その友人が告発に至った思念を、自分に憑依させて暗殺を実行した。
(酒の力で死人とシンクロ率100%になるイタコ的な展開がなんか知らないけど胸アツ!)
▽暗殺が遂行されたあとは、自分の判断で動いていかなくてはならないが、じゃあ自分が大統領となって国を背負っていくかと思えば、ひよって力無くUターンしてしまう。
▽そういう信念ブレブレの人間の弱さ丸出しの主人公を見ていて、あぁわかるなぁ。。と共感。
(血でずっこけたり、ヘリに乗せてもらえない悲壮感、暗殺したの自分じゃないすという嘘が一瞬でバレるのとか、最高すぎるよ。)
▽映画を見ている自分のことを棚に上げて主人公の弱さを叩く気には到底なれないす。。
▽結果として独裁政権はその後も続くことになるけども、民主化に向けて一石を投じた重みは確かにある。
▽英雄っちゃ英雄だけどがっつり一般ピーポーなキム部長。僕は好きです。
▼最後の肉声テープの力がすごい。
▽その声を聞いた時は、シンプルに
「あぁ国民を思うヒーローだったんだ。
彼は生きる時代を間違えたなぁ。。」
と泣けた
▽それこそが彼が暗殺をした動機だったんだ。とキレイに収まるはずだった
▽でもストーリーを振り返ってみると、いろんな矛盾点が出てくる。
▽「なぜやったのか」という主人公の謎探しの旅は、実はラストシーンから始まるというミステリー展開がおもしろい。
▽ポスターのキャッチフレーズに釣られたなぁと感心しました。