「良質の政治サスペンスです。」KCIA 南山の部長たち バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
良質の政治サスペンスです。
いやー、イ・ビョンホン健在。久しぶりに出演作観ましたが、良い俳優さんですね、やっぱり。
彼の心情滲み出る演技が本作全編に渡り緊迫感を生んでいました。
感想を書く前に多くのレビュアーさんに感謝です。
本作、事実を元にしたフィクションですが、
「え?それが?」
「えー?それもなの?」
って感じで、ストーリーの重要なエピソードがフィクションであるということを多くのレビューを読み知りました。今から40年前の韓国で、こんなドラマティックな事件があったなんて!と完全に信じ込んでいた私は自身の不勉強を心から恥じました。
なので、事前に今回の舞台となる「朴大統領暗殺事件」の概要と関係した方々の情報は事前に頭に入れておいた方がいいかな?って思いました。
それはさておき、さておきですよ。
上質な政治サスペンスです。主人公の私生活、いや登場人物の私生活など描写されず、事件前40日の出来事を関係者たちの行動、苦悩、戦略、考えの変化、変わらぬ大統領に集中し描いてるので常に「どうなる?どうなる」のハラハラ続きます。
フランスのあの場面はかなりの緊張感でした・・・そして「え!?」そーなの?の終わり方。いいです。
ノンフィクションだったら事実と異なるところが多いので、サスペンス感はなかったかもしれません。
また、大統領側近同士のマウントポジションの取り合いもなかなか良いですね。
それをサスペンスというかどうか?はさておきですが。
あとはラストですねー。
キム部長・・・本当のところはわからないけど、この作品では「私怨」で動いたように見えました。
「こんなに頑張ってるのに!お前はー!」みたいな。
冷静に事に及んでたのは彼の部下だけだった気がします。
無計画が半端ないのです。あと、あの動転具合。とてもじゃないけどこの先々を考えていた「革命家」には見えませんでした。・・・小物感をうまい具合に出していたかなー?って。
ま、フィクション面が多いので、きっとこれも脚色かなぁ?って思っちゃいますけど。
思うに、ここまでフィクションに振っているのであれば、(レビュアーさんの感想を読んだだけですが)ノンフィクションテイストの演出は削って欲しかったなぁと。
もっと外国との接点も描いて、国同士でのヒリヒリを描いても欲しかった。
それと、朴大統領が18年続けられた要因や、暗殺があったもまだしばらく軍事政権を続けざるを得なかった韓国の事情などにも踏み込んで欲しかったなぁ。
背景をもっと書き込んんでも良かったんじゃないかな?
だから中途半端なエンドロール間際の肉声と映像は不要だったのではないかな?って思います。
ほぼフィクションなのにこれを入れる理由は?なんだか、革命家気取りの元部長って見えちゃいます。お気の毒。恥の上塗りっぽくて。
うーん、演者も演出も映像もよかったから惜しい。
しかし、、、この密室政治、暴力(銃)でなんとかしようという政治の中枢の人々。あってはならんですね。政治とは呼べないですね。
なんでしょうねー、人間の考え方や性格のように、国の考え方などは早々変わらないと思っている僕は、ちょっと隣国の今を心配してしまいました。
ただ、ここまで描かせる懐の深さも同時に感じましたけどね。