「ある意味、貴重な体験だった」すくってごらん 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
ある意味、貴重な体験だった
いやはやなんとも、どうにもレビューの難しい作品である。
ミュージカル映画と知らずに見はじめたので、尾上松也がいきなり歌いはじめたのには驚いた。ミュージカルといえば名作「シェルブールの雨傘」を思い出すが、本作品を名作と比べてはいけない。月とスッポンはおろか、アンドロメダ大星雲と芥子粒ほどの違いがあると言ってもまだ足りないくらいだ。
この映画を観る3日前に日生劇場でミュージカル「ウェイトレス」を観劇したのがいけなかったのかもしれない。主演の高畑充希はじめ、歌が皆上手だった。しかし本作品は、歌声がどこかおかしい。機械的な声に聞こえるのだ。まるでフォトショップで修正した写真のようである。そのせいなのか、柿澤勇人を除いて、尾上松也とその他の人の歌は、まったく上手く聞こえない。特に百田夏菜子の歌は聞くに耐えなかった。
ストーリーは小学生が書いたみたいで必然性も何もなく、序盤からこれは駄目な作品だと分かったが、もしかしたら中盤で盛り返すかもしれないと席を立たずに我慢して鑑賞。しかし挽回するどころかどんどん酷くなり、最悪に駄目になったところでエンディングである。これほど酷い作品は久しぶりで、ある意味、貴重な体験だった。
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