「太ってもドニーの兄貴」燃えよデブゴン TOKYO MISSION マガランさんの映画レビュー(感想・評価)
太ってもドニーの兄貴
最近お正月映画と呼べるものが減ってきた気がする。
いい意味で言うと、春休み、夏休み、冬休み~年末年始という
映画公開の中心時期が一年に満遍なく広がっている印象あり、
ただ年末年始は大作映画を一本は観たい気持ちは
子どもの頃からの経験があるので、
ようやく、いや久しぶりにお正月映画として楽しめる
エンターテインメントの快作だと思う。
それに香港のアクション映画、主演は宇宙最強のドニー・イェン兄貴。
監督は日本が誇るアクション監督、谷垣健治。
最初、ちょっと映像的に現代調に凝った感じかなと思わせつつも、
まだ痩せているパートでのドニー・イェン兄貴のキレをまず確認。
上半身はタキシードなのに下半身はなぜかジャージ(だったと思う)という
アンバランスな衣装で武装した強盗集団に身一つで突撃&追跡する兄貴。
結局兄貴は香港映画によく出てくる腕はものすごくいいが
派手に活躍するため、警察内の厄介者(これに時代遅れ感を味付けとして加えて)
であり、この追跡で何故か何もしていない同僚は昇進、兄貴は証拠品係に左遷。
また追跡のせいで婚約者との約束をすっぽかし、愛想つかされて別れる。
ただあらすじだとこれで落ち込んで太るとあるが、
実際には婚約者もなかなか性格が特殊(神経質、売れない女優だけどプライド高め)な故、
付き合っている時点からドニー・イェン兄貴はちょっと距離感ある感じ。
ただいつもそばにいるはずの存在がいないことで何となく空虚になり、
次第に太り、コツコツそれを重ねた結果、120㎏の巨漢になってしまったというのが、
現代っぽさと、昔の香港映画の荒唐無稽さとは一線を画して良いなと思えた。
それから日本へ容疑者を護送する兄貴、日本に来て容疑者は逃げるは
トラブルに巻き込まれるも、日本のオリエンタルな歌舞伎町(架空)でヤクザ連中を料理、
太っても兄貴というキレと太ったおかげで付いた威力で降りかかる火の粉を払うように
敵を倒していく。
途中でドニー・イェン兄貴の過去作「SPL」や「フラッシュポイント」の映像を出してきたり、
オマージュシーンを再演したり、お年玉的な遊びが尽きない。
不思議なのは後半、婚約者と再会するときに何故かここぞという場面で
大きな地震が起きる。地震によりシーンが一旦リセットされるような感じと
何かが起きるのではないかという期待が籠る不思議。
ヤクザの野心的なボスを演じた丞威とのラストマッチ、
ファンならピンとくるオマージュもありながら、
コミカルな風貌でキレキレのアクションをイケメンに叩き込むドニー・イェン兄貴。
日本の警察が腐敗していたり役に立たないという外からの目線もありつつ
遊び心と人を大事にする心を忘れない、ドニー・イェン兄貴の快作だった。
谷垣健治監督の次回作を楽しみに待ちたい。