「物づくりの映画として惹かれる空気感」エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0物づくりの映画として惹かれる空気感

2021年1月11日
PCから投稿

物づくりの過程を見つめるドキュメンタリーとして面白く観た。自分が全く預かり知らないレコードジャケット制作への興味関心が鑑賞の入り口だったものの、気がつくとむしろ、本作の居心地のよさ、柔らかな空気感に不思議なほど惹きつけられていた。世の中のあらゆる仕事は、一つの依頼に対して求められる答えを「これだ!」とバチンと返すことこそ理想だと思うが、柔らかな物腰の菅谷さんが、何よりも「最初に音源に接した時のインプレッション」を大事にしながらアイディアを徐々に詰めていく姿勢は、おそらく多くの人に「自分もそうでありたい」と思わせる何かを秘めていると思う。また、本作の構造として、人名や肩書きをはじめとする説明的なテロップを一切なくし、観る者が頭ではなく感覚としてこの物づくりの世界へ没入していけるよう配慮しているのも嬉しいところ。それは菅谷さんの手がけるアートワークの持ち味とも見事に重なり合う部分だと思うのだ。

コメントする
牛津厚信