声優夫婦の甘くない生活のレビュー・感想・評価
全44件中、1~20件目を表示
声優は若い役も演じる
俳優は大抵自分の年齢相応の役柄を演じる事が多い。子役は子供を演じるし、20代の若手俳優はその年齢に見合った役を演じ、年をとれば老人の役をやる。しかし、俳優の中でも声優だけは少し事情が異なる。40代や50代のベテランが子供の演じることだってある。本作はその声優特有の事情を見事に活用している。
イスラエルに移民をしてきたスター声優だった夫婦は仕事にありつけない。妻はそこでテレフォンセックスのバイトにありつく。初老といっていい年齢の彼女だが、さすがプロの声優である、22歳の女を演じきってみせる。夫の方は、海賊版ビデオの吹替という裏家業に手を出す。22歳の女を演じることで心まで若返っているように見える妻が印象的だ。演じるというのは、装うということではないのだ。
クライマックスに訪れるイスラエルの現実が、まるで映画のようだ。ガスマスクが配布される日常の非日常感。事実は小説より奇なりだ。フェリーニ作品をはじめとして名作への愛の表明も見逃せない。
一見淡泊だが噛むほどに滋味豊かなシニア夫婦の再出発ドラマ
ソ連崩壊期の90年代以降、大勢のユダヤ人がイスラエルに移住し人口の2割を占めたという史実に驚く。ロシア語とヘブライ語は当然別の言語で、国民の5人に1人が一時的とはいえ言葉がろくに通じない移民になった計算だ。監督と共同脚本の2人の親世代の体験に基づいた物語だという。主人公夫婦の職業が声優ということもあり、言葉によるコミュニケーションが話の鍵であり、映画愛もたっぷり詰まっている。
インテリでも話せなければ真っ当な職に就けず、夫が得たのはチラシ貼りの仕事。外回りの先で見つけた海賊ビデオ店で、違法の吹き替えをすることに。妻はロシア移民男性相手のテレフォンセックスのオペレーターに。若いセクシーな女を演じ、相手によって巧みに声色を使い分けて客を魅了し、ロマンスの気配も…。ままならぬ再出発、積年の不満も爆発して危機を迎えるシニア夫婦だが、とぼけた笑いと穏やかなペーソスでしみじみと楽しませてくれる。
ヴィクトルとラヤ、二人それぞれの望み
ソ連崩壊直前にイスラエルへ移住してきた。ソ連での生活は、想像でしかないが自由が制限されたものであったろうと思う。
自由がないとは、選べる選択肢が少ないことだ。
逆に言えば、移住により自由を得たならば、自分で好きなことを選べるようになったということだ。
しかし、言葉の壁や情勢が不安定なことにより思ったようにうまくいかないコメディが第一の物語だ。
そして第二の物語として、ヴィクトルとラヤが秘める叶えたい想いがある。
ヴィクトルは、ラヤに主役の吹き替えを演じさせたいと願っている。だから声優の仕事にこだわるのだ。
自分が声優の仕事を続けていれば、いつか女性が主人公の作品がきたときにラヤに演じさせることができると。
一方ラヤは、主役を演じてみたいという願いはあるものの、それは、尊厳ある個を求める本当の想いの延長でしかない。
なので、声優業にこだわることなく、やりたいことをやろうとする。
偶然得た「香水売りの仕事」は、自分の望みを叶えているように感じたのかもしれない。
ラヤは自分を見てほしいと願っていたのだが、電話の相手であるゲラは、ラヤが作り出したマルゲリータ(名前違うかも?)しか見ていなかった。
面と向かって話しても、ラヤがマルゲリータだと気付かない。
ラヤが望んでいたことは全く叶えられていなかったといえる。
それと対になるように、電話越しに少し話しただけでラヤだと気付いたヴィクトル。
皮肉なことに、ラヤに別人を演じさせようと躍起になっていたのだが、それは、ラヤ本人を見てラヤ本人を愛していたからなのだ。
ヴィクトルは常にラヤのことしか考えていなかった。
ラヤの、輝きたいという望みは「君の声が好きだから」と結婚したソ連時代に既に叶っていた。少なくともヴィクトルの中では。
二人がそれに気付けたかどうかわからないが、なんだかんだ愛し愛されうまくやっていけるように見えた。
ソ連からイスラエルへ
1990年、崩壊寸前のソ連からイスラエルに移住したユダヤ人老夫婦が主人公。
二人はソ連で声優をしていたが、そんな仕事はなかった。
妻は実力でテレホンセックスのバイトを始める。
夫はプライドが邪魔をしてなかなかいい仕事が見つからない。
この二人の飄々とした日常が、なんとも言えない空気を醸し出している。
イスラエル映画って初めて観た。
ロシア系ユダヤ人の亡命って多いんだね。
堅物な夫を支えてきた妻の本当の声をマルゲリータからの低音ボイスで聴こえてきたような。
ロシア語も面白い響きがして朴訥なイスラエル語とは対照的だった。
一周回って元通り!
クスッと笑える要素があり、楽しく鑑賞できたが、ソ連が崩壊して、ベルリンの壁が壊されて、これくらいのシニア達が一番困窮したのではないだろうか。
念願の自由を手に入れ、新しいチャンスを掴もうと試みるのだが…現実は想像以上に厳しかった。
60過ぎとあれば、まだ気力も体力も衰え切っている訳ではない。希望に胸を膨らませ新しい世界に飛び込んでみたくなるだろう。
どん詰りの状況下で妻がやっとこさ見つけた仕事(テレホンセックス)を通して夫婦関係の綻びが浮かび上がって来るのがまたなんとも。
ガスマスクなどの物騒な小物も登場して、中東の緊迫感を感じつつも、でもそれが妻の存在を再認識させる大事な役割を果たすのであるが…、やっぱり最後はこうなるよね、一緒に添い遂げるしかないよね、もうここまできたらね、と納得の結末だった。
高齢男性の潰しの利かなさが〜〜
《お知らせ》
「星のナターシャ」です。
うっかり前のアカウントが引き継げない状態にしていまいました。(バカ)
以前の投稿の削除や取り消しもできないので、
これからは「星のナターシャnova」として
以前の投稿をポチポチ転記しますのでよろしくお願いいたします。
==============
ロシアから長年出られなかったユダヤ人夫婦は
ロシア語は堪能だけどイスラエルの言葉は
ほとんど話せなかったんだよね。
だから、自由に生きられるはずの祖国に帰って来ても
何も仕事が無かった。
年齢的にも60オーバーってのも厳しいよな〜
仕事が無い状態から何とか経済的に自立しなければ!
なのに、男はプライドが捨てられないんだな〜〜
旦那に一所懸命合わせて生きて来たのに
その旦那は肝心な時に頼りにならなかった!
旦那が批判した妻の見つけた仕事。
でもその中に自分なりの遣り甲斐を見つける妻!
結局、女の方がやっぱ強いんだよな〜〜
それでも、長年一緒に生きて来た相手への労りは失われない。
それって何なんでしょうね??
バツイチナターシャには理解できないわ〜〜〜(笑)
まあ「甘くない生活」を改めてご覧あれ。
で、月に8回ほど映画館に通う中途半端な映画好きとしては
公式HPで出演者のプロフィールを観てると監督もキャストも
この映画の主人公夫婦と
同じ様な経験をしている俳優ばかり。
やっぱ何らかの、社会現象(時には災害やら)を
経験してる俳優さんがその経験に近い役を演じると
リアルに伝わってくるのって凄いよね。
恥ずかしながら、昼食後に暖かい映画館で観たので
最初の方の20分程度は眠気に負けましたが
後半はなかなかにシニカルな展開。
日本でも熟年夫婦がUターンやIターンで
ジタバタする様子が多々散見される昨今、
改めて妻や夫が日頃から本心を吐き出しておく大事さが
伝わって来る気がします。
高齢男性の潰しの利かなさが〜〜
ロシアから長年出られなかったユダヤ人夫婦は
ロシア語は堪能だけどイスラエルの言葉は
ほとんど話せなかったんだよね。
だから、自由に生きられるはずの祖国に帰って来ても
何も仕事が無かった。
年齢的にも60オーバーってのも厳しいよな〜
仕事が無い状態から何とか経済的に自立しなければ!
なのに、男はプライドが捨てられないんだな〜〜
旦那に一所懸命合わせて生きて来たのに
その旦那は肝心な時に頼りにならなかった!
旦那が批判した妻の見つけた仕事。
でもその中に自分なりの遣り甲斐を見つける妻!
結局、女の方がやっぱ強いんだよな〜〜
それでも、長年一緒に生きて来た相手への労りは失われない。
それって何なんでしょうね??
バツイチナターシャには理解できないわ〜〜〜(笑)
まあ「甘くない生活」を改めてご覧あれ。
で、月に8回ほど映画館に通う中途半端な映画好きとしては
公式HPで出演者のプロフィールを観てると監督もキャストも
この映画の主人公夫婦と
同じ様な経験をしている俳優ばかり。
やっぱ何らかの、社会現象(時には災害やら)を
経験してる俳優さんがその経験に近い役を演じると
リアルに伝わってくるのって凄いよね。
恥ずかしながら、昼食後に暖かい映画館で観たので
最初の方の20分程度は眠気に負けましたが
後半はなかなかにシニカルな展開。
日本でも熟年夫婦がUターンやIターンで
ジタバタする様子が多々散見される昨今、
改めて妻や夫が日頃から本心を吐き出しておく大事さが
伝わって来る気がします。
「イスラエルあるある」を含む人情もの
実は時間潰しに時間が合う映画として偶々見たのだが、イスラエル映画自体滅多に見られるものではないし、意外に楽しめた。冷戦後に旧ソ連からユダヤ人が「祖国」イスラエルに移住してきたことはよく知られているが、到着後も生活が楽でなかったことは想像に難くない。その時代に上手に寄り添ったフィクション。初老の声優夫婦の人情が心にジワリと沁みた。国民に防毒マスクを支給するなど、周りが敵だらけのイスラエルの国情あるあるも少し含まれる。
サバ読みました。40歳ほど。
いや、そこはSUBARUを選ぼうや、そんな古いMercedesよりも。あ。1990年頃の話だった。古く無いか。でも、やっぱりSUBARU一択w
ここ数年のイスラエル映画が、どれもこれも合わなくてて。コレが一番好き。
出ロシアしイスラエルでゼロからの新生活を開始する老夫婦の物語り。
62歳にしてドキドキしちまうんだ。ガバーっと行っちまうんだ。タジタジです。いや、俺も遠慮します。でも。あんた、年齢なんてどーでも良い!とか言ってなかったっけ?
本質はドタバタの喜劇ながら、スローな展開と少な目な会話で描写される老夫婦のエピソードは、力が抜けてて脱力系。マリア・ベルケンさんの声の若々しさもあって、終始ホッコリしてしまう、珍しいイスラエル映画は88分の短尺。
原題、golden voices は複数形だから老夫婦を指しており、コンビ名的な使われ方。まぁ、いつまでも2人してお元気で。
って事で。
良かった。
割と好きです。
イスラエルの大変さ
ベルリンの壁崩壊、東西冷戦の終結頃にソ連からイスラエルに移住したソ連では有名な声優だったユダヤ人夫婦の話。
イスラエル建国前、長い間各地に散らばって生活していたユダヤ人が、イスラエル建国後移住して国を作っていったが、移住した人も大変だっただろう。
この夫婦もやはり仕事が無くテレフォンセックスのような仕事をする妻と映画館で映画泥棒をして吹替の仕事をする夫となかなか良い仕事に恵まれない。
皆んながイスラエルの言葉、ヘブライ語を話せる訳じゃなかっただろうから、イスラエルを国として作っていくのも大変だろうと思った。
それと、イスラエル映画は初めてで良い経験になった。
夫婦も安定した仕事がなくなった時の女性のたくましさと男性の過去にすがる姿が対照的で面白かった。
イスラエルの移民の夫婦を軽妙に描いた好作
時は1990年、ソ連からイスラエルへ移住した60過ぎのスター声優夫婦。ソ連時代にハリウッドやヨーロッパ映画の吹き替えで活躍した夫婦だった。
ロシア系ユダヤ人の多くはイスラエルへ移住したのですね。
イスラエルでの生活は厳しく、過去の名声は役に立たない。妻は夫に内緒でテレフォンサックスの仕事につき、夫は違法な海賊版ビデオの声優になった。
終盤の雨降って地固まる的な展開は平凡ではあるが、移民の生活の厳しさも長年連れ添った夫婦のいざこざも重すぎることなく、むしろ軽妙に綴った好作でありました。
フェリーニや往年のハリウッド映画へのオマージュも映画好きにはたまらんだろう。
ガスマスクを外した接吻はやはりスイート
ロシアからイスラエルに移住してきた声優同士の老夫婦。まともな仕事は見つからず、妻はテレフォンセックス、夫は違法ビデオの吹き替えの職を得る。
夫は妻の仕事が許せず、妻も積年の不満が爆発して家を出る。
しかしお互いを思い遣る気持ちが、また二人を結び付けていく。そして映画への愛がそこにあった。
互いに思って
いるのに、長年連れ添っているから意地になってしまう。夫は違法ビデオのアフレコや、チラシ貼りをするが続かない。妻はそれを見かねてテレホンSEXの相手を始める。それが夫にバレて一度は別居するが‥。
世界共通なのか、不器用な夫
ロシアからの移民夫婦の再出発という設定だけれども、これって日本的にいえば、定年退職後に元の役職にしがみつく夫と、心機一転第二の人生を歩もうとする妻の確執みたいな?
何だか、よその国の話とは思えない、熟年夫婦のあるあるな話に見えてしまったのは、私だけ?
しかし、男ってやつは何とも不器用よね。
妻の写真を撮りまくるくせに、妻には直接気持ちを伝えない。
自分はヱロ電話したくせに、妻の仕事は認めない。
妻の安否が心配ならば、大事にすればいいのに。
妻も妻とて、我慢はいつか爆発する。
その代償に、他の男を求めてもうまく行くはずもなく。
やっぱり元のサヤに収まるのか?
う〜ん、このあたりは微妙かな。
ここまで我慢して、三行半を突きつけたなら、潔く捨てちゃえばいいのに。
そこが、やっぱり情なのかもね。
さて、この夫婦、この先うまくいくのかな。
熟年夫婦の危機。
ソ連からイスラエルに移住した熟年夫婦の再スタート話。じんわり夫婦の気持ちと移住後の苦労が伝わってくるけど最後はホンワカできてよい気分になれました。しかし、熟年になっていざというときはやはり女性優位なんだろなー。世界各国柔軟に対応できそう。
コメディとしても夫婦の絆の話としても中途半端
ソ連からイスラエルに移住してきた声優夫婦の物語。
1990年が舞台なので、ソ連からの移住が認められたことと湾岸戦争の直前というところが舞台のポイント。だから普通にガスマスクが配られたりする。
職もないのにイスラエルに移住してきた気持ちもわからないでもない。でもそこらへんの説明は不足気味だし、夫婦の微妙な関係性の理由も大したものは待っていなかった。そして笑いも今一つ。
監督の体験をもとにしたロシア系ユダヤ人を描きたかったのはわかるがドラマが中途半端だった感は否めない。
映画に対する深い愛を背景に年老いた声優夫婦の新生活にまつわる悲喜交々を軽やかに描写するもう一つの『マリッジ・ストーリー』
舞台は1990年、『スパルタカス』のカーク・ダグラスの吹替を担当するなどソ連では一流だったユダヤ人の声優ヴィクトルは民営化と世代交代の波には抗えず失職、声優仲間で妻のラヤとともにイスラエルへ移民する。憧れの聖地での新生活に期待を抱く二人だったがそこには声優の仕事はなくヴィクトルはビラ貼りの仕事を始めるが、ラヤは何も知らずに応募して採用されてしまったロシア人相手のテレフォンセックスの仕事で才能を開花させてしまったことから今まで平穏だった二人の生活の雲行きが怪しくなっていく。
イスラエル映画というのは恐らく初観賞かと思いますが、セリフが主にロシア語だからかほぼフランス映画のようなゆったりとした雰囲気で淡々と進むドラマ。しかしここで描写されるのは正に“甘くない生活“。言葉も通じない国でかつてスターだった男とその栄光を影で支えた妻がゼロから生活を始めることの過酷さを微かなユーモアで味付けしながらもしっかり描写しています。夫婦が喉の奥につかえていた心情をぶつけ合う様は『天才作家の妻 40年目の真実』や『マリッジ・ストーリー』のように辛辣ですが、それよりも一切セリフでは説明されないさりげない仕草に何もかもぶつけ合ったわけではないことを匂わせているところに仄かな優しさを湛えています。本作の屋台骨になっているのは映画への深い愛情。フェリーニの諸作品他へのオマージュが随所に仕込まれていますが、個人的には海賊版レンタルビデオ屋のモニターに映し出された『クレイマー、クレイマー』の映像に絡めてヴィクトルがいかに卓越した技能を持つ声優であったかを示すシーンに感動しました。そして最も印象的なのは様々な声色を使い分けることで様々な男達の好みの女性を電話越しに演じるラヤがその才能ゆえに胸の内を掻きむしられるワンシーン。ここで提示される途方もない切なさの余韻は終幕の後もしばらく残りました。
全44件中、1~20件目を表示