「北陸の塩辛工場で働く山田の、過去と現在のこと。」川っぺりムコリッタ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
北陸の塩辛工場で働く山田の、過去と現在のこと。
山ちゃんこと山田のお話です。
山ちゃんは前科者で出所したばかりです。
「親もクズだから自分もクズ。クズは遺伝する」
そう思っている山ちゃん。
事実不幸な生い立ちで、
4歳で両親が離婚。
父親とはそれ以来会ってないので顔も覚えていない。
塩辛工場の社長(緒方直人)からは、
「頭使うより、手を使え」
「こんなことやっていて何になるんですか?」
と、山田が聞けば、
「何になるかは10年やってみないと、分からないものだ」
と言われる。
仕事帰りに塩辛をくれる。
山田(松山ケンイチ)は仕事と同時に住まいも提供される。
風呂キッチン付きふた部屋のハイツムコリッタだ。
入浴してると、見計らったように隣の島田(ムロツヨシ)が現れる。
給湯器が壊れているので風呂を貸してくれと、言うが、
山田は必死の思いでドアを閉める。
他人とは関わりたくない。
所持金も底をつき、ふて寝をしていると
島田が不揃いな胡瓜とトマトを差し入れしてくれる。
腹ペコだったので凄く美味しい。
胡瓜とトマトを交互に食べてると、
有無を言わさずに島田が風呂に入ってしまう。
そこからなし崩し的に、
炊き立てご飯をよそって味噌汁も注ぎ、
ご飯もいつのまにかお代わりして、
勝手に1番風呂に入る島田。
冷蔵庫も開けて缶ビールを飲んでいる。
ある日、山田の郵便受けに役所から封筒が届く。
4歳で生き別れして顔も覚えていない父親が
「孤独死した」という報せだった。
困惑して放っておこうとすると、
島田が、
「山ちゃん、それはダメだよ」と強く言う。
バスに乗って役所に行くと、福祉課の堤下(柄本佑)に
沢山の無縁仏を見せられる。
「居なかったことにされた人たちだ」
そう思う山田。
1年間保管して受け取りに来ないお骨は火葬して
共同墓地に埋葬されるそうだ。
白い箱のお骨が山田が寝ている部屋で光る。
怖くて九九の七の段を逆さまから唱える。
七九=六十三
七八=五十六
七七=四十九
七六=四十二
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山田の恐怖克服法だ。
高校生の時、2万円くれた母親は、
「これっきりだからね!」
と、山田の前から消えた。
以来会っていない。
「母親はクズで、父親は野垂れ死」
「クズは遺伝するるですかねー」
それでも炊き立てのご飯と塩辛それに島田の漬けた浅漬け。
しみじみと美味い。
炊き立てのブザー音で蓋を開けて深呼吸をする。
ご飯の香りを吸い込む。
(富山のブランド米「富富富」)
(ふふふと読む)
島田のお喋りが止まらない。
2人で囲む食卓が少しづつ豊かになる。
なんの世話にもなっていない父親。
その遺骨が無言のプレッシャーをかける。
トイレに流そうとするが出来ない。
川に流そうとすると僧侶のガンちゃんが後ろで咳払いをする。
台風の夜、落っこちて骨壷が割れる。
お骨は捨てると3年以下の懲役だが、
粉に砕いて撒けば罪にはならない、
島田が教えてくれる。
突然の遺骨に振り回されれる山田。
他人なのに山田に優しく接するハイツムコリッタの人々。
それぞれ問題や悩みを抱えている。
半年間家賃滞納の墓石売りの溝口とその息子。
200万円の墓石が売れたお祝いの高級牛のスキヤキ。
島田、山田、南と娘。
みんなが箸を持ってきて食べるシーンが極上。
「みんなで食べると美味しいよねー」
「俺、笑っても良いんすかねー」
と、山田が言う。
追記
「いのちの電話」の相談員をしている友達がいます。
自殺の相談より寂しいお年寄りの、
「誰かと繋がりたい」
そういう電話が多いそうです。
2年間の研修と交通費も出ない完全無報酬です。
傾聴に徹すること。
ひたすら話を聞くそうです。
聞き過ぎて、うつ病と戦ってる彼女に頭が下がります。
軽い気持ちのアルバイトがルフィなどの悪に繋がる。
「オレオレ詐欺」に騙された母親は、息子から絶縁されたりする。
(山田は死ぬほどの空腹があった・・そう言っている)
ハウスムコリッタの善意の人々。
山田をクズ、と決めつける人は誰もいない。
幸福な出会いによって救われる青年の、
寓話のようにあったかい話です。
こちらこそ共感たくさんしていただきましてありがとうございました😊
島田は、山田に父親のお骨を引き取りに行かせたことで、一番風呂パスされます。あの米の研ぎ方や料理について専門の方が指導されているようですね。🦁
琥珀糖さん
共感&コメントありがとうございます。
たまたまFMを聴いていたらパーソナリティが「家族を大事にしないと」と感想を述べられて興味を持ち、たまたまちょうど観られるタイミングの作品が『波紋』だったという巡り合わせで荻上監督作品に初めて出会えましたが、感謝感謝です。この『川っぺりムコリッタ』もとても素敵な作品ですね。皆さんのそんなレビューを読むたび嬉しくなります。
共感とコメントを有り難うございます。おほめに預かり恐縮、こちらこそブラボーです。うれしいです。
いつも詩のように言葉を積み上げていく、琥珀糖さんのレビューに感銘しております。
そう、寓話だったのかも知れないですね。だから、空飛ぶイカとか、気品溢れる幽霊とか、宇宙との交信基地とかごく自然に現れたとも思えます。
琥珀糖さん、コメントありがとうございます。
私の場合、観た作品の記憶に残ったワンシーンだけでも
書き残しておければ、内容を思い出すきっかけになるかなぁ と
半ば「備忘録」のつもりで書いています。
楽しく読んで頂けるのなら嬉しいです。
(※あと、ボケないように頭の体操も兼ねてマス ^_^;)
琥珀糖さんのレビューも、「あ、そんなシーンあった」と
頷きながら、いつも拝読しております。
これからも宜しくお願いいたします。 (固い… ・_・; スイマセン)
いつも
ありがとうございます。
この作品は
生と死を描いて
はじまりがあれば終わりがある。
使われなくなった電化製品も山積みになっていたりとか。
ささやかな幸せは身近にあることを改めて考えさせられました。
それも押しつけがなく問いかけられているところがいいです。
琥珀糖さんから
いつも誉められてうれしいです。
わたしも琥珀糖さんの
レビューに頷きながら感動してます。