「ささやかな日常の尊さを、奇跡的なまでの煌めきで捉えた超絶大傑作」川っぺりムコリッタ 最凶線さんの映画レビュー(感想・評価)
ささやかな日常の尊さを、奇跡的なまでの煌めきで捉えた超絶大傑作
タイトルにあるムコリッタは、どうやら時間の単位を表す仏教用語らしい。
ムコリッタは1日の三十分の一、つまり48分で1ムコリッタになるとのこと。
こうした説明が映画の冒頭ではさまれる。
そこから松山ケンイチ演じる訳ありっぽい男が富山県の田舎町に越して来るところから物語は始まる。
イカの塩辛を作る工場で働き始め、そして川っぺりにあるムコリッタというアパートで暮らし始めるというシンプルなストーリーだ。
この映画はストーリー自体がシンプルだからこそ、日常の生活を捉える細かい描写がとにかく素晴らし過ぎました。
まずは、素晴らしかったのはご飯のシーン。
炊きたての炊飯器のアップとか、イカの塩辛とか、採りたてのトマトとかきゅうりとか、みんなで食べるすき焼きとか、出てくる料理全てがどんな高級料亭の料理よりも美味しそうに見えました。
やっぱり、ご飯は何を食べるかじゃなくて、誰と食べるかってことが重要だということを改めて教えてもらったような気がしました。
他に素晴らしかったのはお風呂のシーン。
昔ながらの大人1人がギリギリの入れるくらいのせまい風呂場なんですが、松山ケンイチとムロツヨシの表情も相まってめちゃめちゃ至福の時間なんだろうなっていうのがとても伝わってくる良いシーンでした。
あと印象に残ったシーンは、満島ひかりがアイスを食べながら妊婦のお腹を蹴りたくなるって話すシーンとか、満島ひかりが夫の遺骨を口に含めりして亡き夫に想いを馳せるシーンとか、台風の日に松山ケンイチとムロツヨシが九九の7の段を逆から言うシーンとか、お風呂上がりに牛乳を飲む習慣が実は父親からの影響だったと気付くシーンとか、決してドラマティックな訳ではないけれど深く心に染み入るようなシーンたちが本当に素晴らしかったです。
全体的に横長のスクリーンサイズを活かした平行線が幾重にも折り重なった横長な画作りが素晴らし過ぎました。