「誰かを亡くした人たちに訪れる ささやかな幸せ」川っぺりムコリッタ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
誰かを亡くした人たちに訪れる ささやかな幸せ
ぼく、お金ありません!久しぶりに日本人でよかったな〜と思える作品に出会えた…本当にいい映画だったな。仏教的思想が感じられる。最初に気づいたのは主人公・山田が風呂上がりに窓際で牛乳を飲むカットだけど、それ以降も(他の人と同じカットに収まるときは別)常に構図として前が詰まっていて後ろに空間を背負う形になっていて、山田の過去やそれに対する後ろめたさを象徴的に示唆していた。あと、包み込むように暖かな光が差し込んでいるのが印象的だった。炊きたてふっくらご飯みたいな映画でした!
ご飯炊く才能ある"山ちゃん"、松ケンの自然体な魅力。"社会性のない"土足で強引にズカズカと上がり込むピュアなムロツヨシの魅力。二人の食事シーンの長回しが毎回すごく良くて、本当に美味しそうだったし、会話劇としても良かった。助演男優賞など獲ってもおかしくない。満島さんも安定に素晴らしい。山田の働く水産会社の社長の少し暑苦しいくも、同時に真剣に向き合う人としてのあったかさみたいなものがあって素敵だった。
ありがちな表現になってしまうかもしれないけど、ぼくたち現代人が忙しなく過ごす中で忘れがちなものを思い出させてくれるような優しい空気が流れていた。その中で、悪く言えば作品から"浮く"ような、異彩を放つカットやシーンがいくつかあったけど、それが作品通して見たときに決して悪目立ちするわけではなく、むしろ却って登場人物たちをより身近に感じる大切なタイミングとして効果的に生きていた。その他、ワンシーンくらいしか出てこないキャストも名前のあるしっかりとした役者陣だったり、総じて魅力的。大切な人や身近な人を喪ったときの向き合い方、弔い方も人それぞれ。この出会いを大切にしたい。