「監督の実子である姉弟の存在感に目を奪われる。」スウィート・シング 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
監督の実子である姉弟の存在感に目を奪われる。
アレクサンダー・ロックウェルが、映画学校の教え子たちをスタッフに、実子のラナ・ロックウェルとニコ・ロックウェルを主演に描いた完全インディーズのロードムービーだ。いや、ロードムービーパートは後半であり、劣悪な環境で生きる子供たちのピュアネスを描いたファンタジーとも言える。
とにかくこの映画は、ラナとニコに惹き込まれずにいられない。よくもまあ実の子供をここまで役者として輝かせられるものかと感心するばかりだが、とりわけ演技だけでなく歌も披露して作品の世界観を体現するラナには映画を支える覚悟があったように感じられる。
モノクロのざらついた画面に時折カラー映像が挿入されるのだが、その変化に特に脈絡が感じられるのも、なんだかプラスに作用している。理屈だけでは作れない創作のひとつの形なのだと思う。あとこの映画だけでなく『ミナリ』やケリー・ライカートの諸作に出まくっているウィル・パットンは、ある意味でインディーズ映画の天使な気がしてくる。
この映画での酒に溺れるどうしようもない好人物というキャラクターは、ウィル・パットンのキャリアでも最高の役柄だと思うので、数少ないパットンファンは必見だと思いますよ。
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