「「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」に続く意欲作。佐々木想監督のこれからに期待」鈴木さん 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」に続く意欲作。佐々木想監督のこれからに期待
映画のタッチはかなり違うけれど、着想は池田暁監督の「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」に近いものを感じる。太平洋戦争時の日本、全体主義社会と隣組など、現代でも同調圧力という形で引き継がれているこの国の“おかしさ”を、パラレルワールド的な虚構の“町”を舞台にした物語で風刺する姿勢。また本作では、敗戦後に天皇がいわゆる「人間宣言」をしたにもかかわらず、今なお自由に論じることがはばかられタブーのように扱われる天皇制のありようについても、わかりやすいメタファーで果敢に切り込んでいる。
いとうあさこについては、お笑いやバラエティの番組でしか見たことがなかった気がするが、これまでも映画やドラマにも出ていたことをプロフィールで知った。役者としての存在感や、本作での役柄に、ちょっと藤山直美(「顔」「団地」で主演)に似ていると感じた(顔もちょっと似ているかな?)。作品のトーンに合った優れた演技だと思う。園子温監督作「恋の罪」での怪演が忘れられない大方斐紗子が、本作でもすみこ役で独特の雰囲気を醸し出し、よいアクセントになっている。
にやりとしたり、はっとさせられたり場面も結構あるのだが、全体としては十分に描き込まれていないというか、少々食い足りない印象だった。それでも、佐々木想監督はたいていの作り手が避けがちな題材に挑む希少な存在なのは確かだし、これからの作品にも大いに期待したい。
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