「生きるための死」皮膚を売った男 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
生きるための死
オンライン試写にて鑑賞。
正直、今作のタイトルを見た時に思ったのは違法な医療作品なのかなと思ったのですが、中身を開けてみたらビックリ、重厚な人間ドラマでした。でもこの考えも後々ある種の正解だったという事に気づきます。
自分はアートを見かける時に美しい、キレイだなと思うのですが、同時に怖いと思う事が多々ありました。この映画を観てよりそう思う事は正しいんだろうなと思いました。
サムの背中を欲しがる芸術家、よくよく考えたら人間の皮膚を買うというのは人身売買のようにも思える恐いシーンなのですが、お金と芸術、互いの思惑が合致した結果、その話は円満的に進むという衝撃的な展開になっていきます。
自分が美術品になり展示される、見せ物にされる、心無いことを言われる、サムの根気も中々なものですが、どんどんと諦めていくシーンも背中からひしひしと感じていて言葉の無い演技も濃いものに仕上がっていてとても良かったです。
内紛や差別、倫理観など社会的な問題も各場面に散りばめられており、しかもどれも邪魔になっていないのが凄い。1フィクションと思って鑑賞していたら、現実と密接している作品で、もっと知識を蓄えて見たら良かったなと少しだけ後悔しました。
終盤のオークションのシーン。自分が競り落とされるのはもうホラーですし、取引額もアートとして見れば高い部類に入るのかも知れませんが、人間としての価格と見れば異様な安さです。そりゃ逃げ出したくもなりますよ。
最後、サムが銃で撃たれ死に、皮膚だけ切り取られ飾られるという感情を揺さぶりまくって映画は終わりを迎えます。でも、死ぬ前に「これは生きるための死なんだ」都胸を張っていたので、これはハッピーエンドなのかバッドエンドなのか。検討もつきません。とても難しいのに面白い作品でした。
鑑賞日 11/2
鑑賞方法 オンライン試写会にて