劇場公開日 2022年3月11日

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「【”消えゆく記憶の中で如何に人間としての尊厳を守れるのか”。クリストス・ニク監督がオリジナル脚本で撮影したデビュー作。独創的な世界観の元、展開されるストーリー描写は秀逸である。】」林檎とポラロイド NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”消えゆく記憶の中で如何に人間としての尊厳を守れるのか”。クリストス・ニク監督がオリジナル脚本で撮影したデビュー作。独創的な世界観の元、展開されるストーリー描写は秀逸である。】

2022年10月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。
 覚えているのはリンゴが好きなことだけ。
 男は治療のため、回復プログラム“新しい自分”に参加することに。
 毎日リンゴを食べ、さまざまなミッション
  ・自転車に乗る
  ・仮装パーティで友達を作る
  ・ホラー映画を観る
  ・バーで酒を飲み女を誘う

  彼は、人間の尊厳を失う事無くこなし、新たな経験をポラロイドに記録していく…。

◆感想

・フライヤーによると今作品のクリストフ・ニク監督は、リチャード・リンクレーターの「6歳のボクが、大人になるまで。」や鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の「女王陛下のお気に入り」の助監督を務めた方だという。
作品を観ると、リチャード・リンクレーターの人間性肯定の姿勢が、しっかりと貫かれ、ヨルゴス・ランティモスの独自な世界観の如き、架空の世界が見事に描き出されている。

・男は、ホラー映画を観た際に知り合った女性と、バーに飲みに行くが、SEXはしない。(したことにするが、ポラロイドカメラには収めない。)
彼は、回復プログラムを指示する人たちに、従うが人間性を越えた行為には自制心を持って、及ばない。

<今作は、哀愁とユーモアを漂わせつつ”どうすれば記憶を失っても人間としての尊厳を守れるか”という切実な問いかけを鑑賞側に投げつけてくる。
 クリストフ・ニク監督の次作は、この作品に惚れ込んだケイト・ブランシェットがプロデュースし、キャリー・マリガンが主演でハリウッドで製作が決定したそうである。
 実に楽しみである。>

NOBU