劇場公開日 2021年6月4日

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「脱北してカナダへ渡った北朝鮮・青年の告発」トゥルーノース 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0脱北してカナダへ渡った北朝鮮・青年の告発

2022年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2020年(日本/インドネシア)監督:清水ハン栄治のアニメ映画です。
北朝鮮の政治犯強制収容所で、過酷な毎日を生き抜く、
日系家族とその仲間たちを描いた映画です。
《ファースト・シーン》
ひとりの眼鏡の青年が、
カナダのトークショー番組で観客に話しかけています。
(彼の名前が誰なのか?私の予想はラストで大きくハズれました)

脱北者は話します。
ある通訳をしていた男性は、日本に手紙を書いただけで、政治犯として
強制収容所に連行されてしまったこと。
別ルートで、妻と子供2人も連行され、裕福な暮らしを追われて、辺境の
強制収容所に連れて行かれるのです。
強制労働に粗末な住居。
足りない食糧、不衛生で劣悪な環境、寒さ。

北朝鮮の事情は私たち日本人はけっこう詳しいと思います。
ワイドショーやニュースショーでよく取り上げられるので、知っています。
多くの国民が餓死していたこと。
綺麗な若い女性は「喜び組」の名で、歌や踊りを披露したり幹部に接待を強要されること。
「密告」が盛んで、チクられる前に「チクる」のが習慣化している。

常々思うのは、北朝鮮に生まれなくて良かった・・・と。
親を選べないように「生まれる国」も選べません。

朝鮮半島は1948年。
金日成(キム・イルソン)率いる北朝鮮と李承晩(リショウバン)率いる韓国に分断されます。
その後1950年6月朝鮮戦争が勃発。
この戦争によりアメリカ軍から日本国の各企業への発注が急増して、
日本経済は戦後の不況から脱出した。
これが、《朝鮮特需》と呼ばれるのです。
その後日本はバブル期を経てGDP世界第二位の国にまで成長する。

南北朝鮮で分断した北は、貧しい国土、寒い気候を選ばざる得なかったことも
その後の貧しさの原因と思われる。
それ以上に金日成(キム・イルソン)の共産国の形態が独裁政権で、権力者を崇拝することを国民に強いる
ばかりで、産業を育てなかった。
息子の金正日(キム・ジョンイル)は更に独裁的で、核開発に多くの経費をかけて国民の幸福を蔑ろにした。
更にその息子の金正恩(キム・ジョンウン)は更なる核開発に多額の国家予算を費やしている。

映画は、強制労働施設でも、老人に食べ物を分け与えるヨンハの母親のような犠牲的な人も多くいました。
それにしても一番許せなかったのは、将校などの兵士が、若い女性をレイプして、
妊った女性は銃殺されていた。
本当に《鬼畜の所業》

脱北者の青年の告白が終わり、客席に家族の姿が写されます。
彼が誰なのかを知りました。
家族が誰かも知りました。
それを見て、更に複雑な気持ちになりました。
《独裁国家・北朝鮮の人権侵害は決して許されない》
その思いを強くする映画でした。

琥珀糖