劇場公開日 2021年6月4日

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「人間らしさをいかに失わないでいられるか」トゥルーノース 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人間らしさをいかに失わないでいられるか

2021年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これはすごい映画だ。北朝鮮という国は、外から正確なことを見つめることが難しいが、本作はそれをやろうとしている。しかも、市井に生きる等身大の北朝鮮の人々のことを描こうとしている。
北朝鮮で生きる人々の等身大の姿を映す序盤から、過酷な収容所生活へとすぐさま展開していく。政治犯の強制収容所は、衛星写真などでしか我々は見ることができないが、本作はその内部に入り込む。過酷な生活と労働で、人間性を失っていく人々の実態がこれでもかと描かれる。
主人公家族の兄は、抑圧する側に一度は回る。妹と母親はどれだけ苦しくても人間らしさを失わない。それはいかにして可能なのかはわからない。監督はタイトルに2つの意味を込めたという。一つは北朝鮮の真実という意味。もう一つは英語の慣用句でトゥルー・ノースは、「絶対的な羅針盤」という意味だそうで、人としてのあるべき姿、生きていく道を見失わない家族の姿を重ねているのだという。監督は、絶対的な人間性の強さを信じる人なのだろう。この映画を見ると、そういうものは確かにあるのだと信じさせてくれる。

杉本穂高