「ウェン・ウーの物語」シャン・チー テン・リングスの伝説 tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
ウェン・ウーの物語
シャン・チーは父子の物語と聞いてはいたが、観ている間はウェン・ウーの物語だとつよく感じた。
シャンチーにとっては父の過去によって母を失い、家族を失い、自分の過去から逃げたわけですが、その果てが「血は血で贖う」という部分でなくて本当に良かった。母、リーを亡くしたことでウェンは弱くなり、リングに頼り、果てはリングの誘惑に負けて、それにより物語が展開する。けれど母の死によってバラバラになった家族は、実は全員が過去に囚われていて、そのひとつひとつが解かれていく。
ウェンにとって、シャンが復讐を果たした後に戻らず、そして遠ざけていたシャーリンも家出をして、絶望(当人はおそらく、そうとは気付かずにいる)していくのにかかった時間が10年なのだろう。10年でテンリングスを付けていても弱くなった父は、いよいよ魔物に弱い心をつけ込まれて行動を起こす……と思うと切なくもある。
過去は変えられない。
けれど隣に家族がいたら、彼の人生は穏やかに終えられていたんだろうか。
1000年以上、リーに出会うまで権力に固執して独りで生きてきた男には孤独はあまりにも辛かったのかと思う。ウェンの中の、テンリングスを手放さなければ手に入らなかった穏やかな時と、手放さなければ奪われなかった幸福を考えると辛い。やはりこれは、ウェンウーの物語だと思う。
モーリスがとても可愛かった。
道化のトレヴァーとのシーンは、家族という血の繋がりに苦しむ彼等と違って、種族も何もかも違うけれど関係が築けるというおもえた表現思えた。
幻想種も綺麗だった。九尾の狐みたいなのとか、じっくり見たい世界だった。
アクションもとてもよかった。
カンフーとかアジアンアクションがふんだんに盛り込まれていて。少林サッカーを思い出した。
ところで、ウェンウー役のトニー・レオンさんがどうにも中川家のおにいちゃんに顔が似てるな、と予告からずっと思っていたんですが、やっぱり似てるとおもう。
そしていま調べたら、同じことを考えている人がいて安心しました。