劇場公開日 2021年9月3日

「銀の龍の背に乗って」シャン・チー テン・リングスの伝説 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5銀の龍の背に乗って

2021年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ラストシーンが洒落ている。世界を救ったヒーローも、バーの片隅で酒を飲みながら世間話をしていては、誰もヒーローだとは思ってくれないだろう。ヒーローが世界から称賛を浴びるには、その前に情報の伝播が不可欠だということだ。それにしてもキャプテン・マーベルは相変わらず忙しそうである。

 アクションもCGも素晴らしく、とても楽しめたのだが、一点だけ気になるところがあった。それは、マカオなのに広東語ではなく普通話(プトンホァ)で話をしていた点だ。「三日後に戻ってくる(三天後我回来=サンティエンホーウォホイライ)」の発音や、広東語なら「無問題(モーマンタイ)」と言うところを「没問題(メイウェンティー)」と普通話で言っていたなどである。
 広東語はジャッキー・チェンの映画などでお馴染みの、賑やかな発音の言語だから、本作品のように静かに話す場面の多い映画には不向きだと判断したのかもしれないが、であれば舞台をマカオにしなければよかった。マカオのシーンで広東語が聞けるのかと少し期待していただけに、ちょっぴり残念だった。

 本作品はMARVEL作品である。ということはシャン・チーがアベンジャーズに加わる可能性が大だ。クライマックスの場面でシャン・チーが銀の龍の背に乗って登場するところを見てみたい気がする。中島みゆきはあまり喜ばないと思うけど。
 戦いの場所はK2の聳えるカラコルム山脈あたりがいい。リングも進化して光速に近い速さと、月の大きさにまで巨大化する能力を持ってほしい。10個もあれば引力で海の水を空中に吸い上げられるだろう。またはブラックホールのようにスプーン一杯の質量が何十トンにもなって近づいたものを何でも引き寄せて素粒子単位に分解してしまうか。

 そうなればキャプテン・マーベルの出番はない。ブリー・ラーソンにはアベンジャーズのドタバタ映画ではなく、その繊細な演技力を生かした文学作品に出てほしいのだ。

耶馬英彦