「控えめに言うと最高」シャン・チー テン・リングスの伝説 ろびんさんの映画レビュー(感想・評価)
控えめに言うと最高
今作の発表を知ったとき、私は期待と不安が半々だった。期待していたのはマーベルヒーローとカンフーが合わさるとどんなアクションになるのか?そして不安だったのは近年ディズニーが関わる映画作品に過剰とも思われるほどに押し出されているジェンダーや人種という問題提起、すなわちポリコレがエンターテイメント性を阻害してしまうのではないか、という2点である。誤解されないように言っておくと、ポリコレという考えには賛成している。ただし、しつこくて興醒めしてしまう映画が多いということだ。
そういった点を踏まえて個人的な感想を述べていきたい。
まず、マーベル×カンフーについては非常に、心の底から楽しめた。とにかくスタイリッシュなのだ。序盤のバスでの戦闘シーンくらいまではまだ「大丈夫かなぁ?」と正直思っていたが、舞台をマカオに移して行こうは戦闘シーンに釘付けになってしまった。マカオの夜景も相まってカンフー×サイバーパンクな映像はこの映画でしか観られないだろう。
終盤の最終決戦においても、予想できなかった興奮を感じさせてくれる演出がたくさんあり、アジアの世界観が再現されていた。
次に、ポリコレとエンターテイメント性のバランスについて感想を述べていきたい。率直に言うと、最初は違和感があった。登場人物はほとんどがアジア系(中国系)であり、会話の端々に中国語が出てくる。ただし、この違和感はおそらく「ハリウッド映画=アメリカ人、英語」という私自身にあるバイアスの問題なのだろう。確かに以前訪れたロサンゼルスにも中華系の人はたくさんいたな、と納得はできた。そして、最初感じていた違和感は徐々に薄れていったのも事実である。それは物語の舞台をアメリカ→マカオ→中国の奥地、というように徐々に西洋から東洋に移したことが原因だと今になって思う。それによって「アジア人のアメコミヒーロー」というコンセプトも何の問題もなく受け入れることができた。よって、不安を覚えていたポリコレとエンターテイメントの両立が上手に図られていたと個人的には思う。
こんなことを長々書いていると、結局自分は今作品をなんとまとめられるのだろう?と思うが、一言で表現するなら「かっこよかった」なのだ。人種も何もそこには存在せず、ただただ憧れるヒーロー像がそこにある、そんな作品だと思う。