「シェンロン登場からのカメハメハ!」シャン・チー テン・リングスの伝説 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
シェンロン登場からのカメハメハ!
今年の夏は、オリンピック、パラリンピックを通して、世界の人々の多様性を呼びかける動きが高まった。マーベル作品にもその流れの中で、女性や黒人のヒーローが次々と誕生し、そしていよいよ、中国人のアベンジャーズ・ニュー・ヒーローを生み出した。鑑賞前は、それほど期待はせず、全編の半分が中国語のマーベル作品には違和感を持ったが、ディズニーと中国マネーの力で、なかなか見応えある大作に仕上がっていた。
内容は、且つての戦いで『テン・リングス』を奪い、永遠の命と絶対的な力を持ったウェン・ウーとその父に歯向かう息子・シャン・チーとの壮絶な親子喧嘩である。ウェンは、『テン・リングス』の力で、傍若無人な殺戮と征服を繰り返し権力を強めてきた。しかし、謎の村で一人の女性と出会い、これまでの権力争いに見切りをつけ、その女性との穏やかな生活を選択する。その2人の子供がシャン・チー。
しかし、母となった妻が殺され、再び『テン・リングス』の力を手にし、息子までもを暗殺者に仕立て、復讐を果たそうとする。そんな父との生活に嫌気がさし、父の元から去った息子に、父は暗殺者を仕向ける。そこに妹も加わる中で、骨肉の争いへ展開していく。また、母の出身地である、中国奥地の謎の村の存在も、ミステリアスさを増すアクセントとなっている。そして、クライマックスは、シェンロン登場からのラスボスへのカメハメハへと、ファンタジーな色合いが濃くなっていく(笑)
アクションは、カンフー・アクションが中心に描かれている為、グロさや痛さを見せしめるアクションでなく、カンフー独特の華麗に踊る演舞のような、素早く美しい戦闘シーンが印象的である。また、謎の村の煌びやかさやそこに住む架空の生物等のファンタジー満載の映像は、ディズニーならではのお得意な描写である。
シャン役のシム・リウは、大作の主演は初めてだが、アジアを代表する新たなアクション・スターとして、これから期待していきたい。また、何といってもトニー・レオンが久しぶりに元気な姿をスクリーンに見せ、相変わらず端正な顔立ちながら、渋みも加わり、存在感ある演技で、作品を引き締めていた。個人的には憧れのヒーローものとしては、主演クラスのビジュアルが今一つであったように感じたが、これも多様性の証なのかもしれない…。
エンドロール曲に、あの12弦ギターが奏でる哀愁漂う『ホテル・カリフォルニア』が流れたのは、我々の世代からすれば嬉しいオマケ。またその後にも、マーベルではお馴染みとなった、次へと続くシーンが2回も盛り込まれているので、最後まで席を立たないように。