「これは凄いですわ」クルエラ 桜さんの映画レビュー(感想・評価)
これは凄いですわ
エマ・ストーンの演技がとにかく光りに光っていた今作。
序盤を見ていると、単なる悲しい生い立ち展開で、ジョーカーのように暗い感じなのかと思っていたが、エステラの優しいけど大胆な性格に徐々に惹き込まれていき、コメディタッチで泥棒家業を進行させていくので、軽い気持ちで楽しく見られた。
ただ、エステラの心優しくひたむきに夢を追う性格が一転、エマ・トンプソン演じるファッションデザイナー社長が自分の母親の仇だと知るや否や、復讐者へと変貌していく様が、見ていてゾクゾクした。
勿論悲しい事で、元の性格も好きなのだが、何とも魅力的なヴィランに出来上がっていくのが見て取れて、まるで「スパイダーマン3」のトビーマグワイアの様な、純粋な悪とは別の悪者道を突き進んでいて、興奮を抑えきれなかった。
彼女のファッションデザイナーとしてのセンスは抜群で、それにプラスして泥棒としての抜け目なさが相まって、観客に見せる「ショー」と化していて、「グランドイリュージョン」のような痛快さすら感じられた。
そして彼女は、仇が自分の実の母親だと知り、手酷く仕返しをされ、再びどん底に落ちるのだが、それを味わった事で、母を失い、一人孤独に泣いていた彼女を救ってくれた、本当の「家族」の大切さを知る事が出来るという展開も見事だった。
からの、復讐として単なる「殺人」という選択肢を取らなかったのも、彼女の中のエステラが動いたように感じた。
それとなんと言ってもエマ・トンプソン演じるバロネスの、完璧なまでのヴィランっぷりが良かったなぁ。
誰がどう見ても嫌いになれるまでの悪っぷりがあったからこそ、クルエラは差程悪者に見えず、勧善懲悪が成り立っていたから痛快だった。
クルエラはとにかくカッコよく、それに可憐でエレガント、衣装一つ一つが、素人目から見ても美し過ぎて、衣装の展示会があれば見に行きたい程だ。
「101匹わんちゃん」の単なる意地悪オシャレおばさんを、ここまで実写化でアップグレード出来るのは、まさに見事としか言いようがない。
エマ・ストーンが美しいのは勿論、徐々に変わっていくが、元の人格までは変わらない複雑なエステラの姿を見事に演じきっていたのも、かなり素晴らしかった。
今年見た映画でもしかしたら1番インパクトがあって面白かったかも。
ディズニーの実写化はハズレ無しだなぁ。
何度も見返したい。