「クルエラ大攻進」クルエラ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
クルエラ大攻進
ディズニーヴィランと言うと、魔法の力を持った者が真っ先に思い浮かぶ。
が、魔法の力を持たない、つまり生身の人間のヴィランも。
中でも圧倒的&抜群のインパクト残すのが、『101匹わんちゃん』のクルエラ・ド・ヴィル。
有名な衣装デザイナーだが、毛皮マニア。ダルメシアンの子犬の毛皮で特性コートを作ろうと企む、私利私欲の為なら手段を選ばない非情な悪女。
実写映画化した『101』でもグレン・クローズが怪演し、強烈であった。
…となると、ハイ、作られました、誕生秘話を描いた実写プリクエル。
ホント、今のハリウッドの流行りよね~。
これでつまらない期待外れだったらアレだけど、ちゃんと色んな要素含んだ面白いエンタメ快作になっているから見事なのである。
半黒半白の髪の女の子、エステラ。
ファッションに興味を持ち、早くも才能を見せ始めていたが、学校で度々トラブルを起こす問題児…いや、危険児。母親とロンドンへ引っ越す事に。
途中、とある屋敷に立ち寄る。ここで悲劇が…。
屋敷で開かれていた華麗なファッションと豪華なパーティーにすっかり心を奪われたエステラ。
こっそり忍び込んだ彼女を、男爵夫人の凶暴なダルメシアンが追い掛けてきて、その勢い余ってぶつかり、男爵夫人と話していた母が崖から落ちてしまう…。
私のせいでママが死んだ…。
悲しみのまま、放心状態でロンドンへ。
食べるものも住む家も無い独りぼっちの所を、ジャスパーとホーレスと出会い…。
…と、ここまで序盤の序盤。
その後の展開を語るのに欠かせないんだけど(母から譲られたネックレス、男爵夫人の犬笛)、ちとタルかった。
何故なら、まだクルエラじゃないから。
もうちょっと続く。
10年が経ち、盗みなどの軽犯罪しながらも、家族のように支え合ってきた3人。
後にジャスパー曰く、「一番幸せだった」。
とある事がきっかけで夢見ていたファッション業界へ。カリスマ的デザイナー、バロネスの目に留まり、その下で働く事に。
が、この出会いがエステラの運命を大きく変える事に…。
バロネスがしているネックレスは母から譲られた筈のネックレス。バロネスが飼っているダルメシアン、思い出した犬笛、記憶…。
自分の過ちで母親が崖から落ちたのではなく、男爵夫人=バロネスが崖から母を突き落としたのだ。
ネックレスを取り戻し、バロネスに復讐。
優しきエステラがいよいよ…!
作品もここから面白くなってくる!
舞台は1970年代の英ロンドン。
劇中を彩るロック音楽の数々は、音楽に疎い自分だって聞いた事ある。
さながら、“奇抜ながらも斬新なファッション・ショー”。作品の目玉の一つ。
これら時代背景のムーブメントが世界観を盛り上げる。
スーパーパワハラ上司、バロネス。
多分と言うか、周りは皆、ビビり怖れ嫌っている。
昔からの自分の夢をここで開く為に、元々の才や培った才を出すエステラ。
何か本当に“○○を着た悪魔”。
…しか~し! 本作はキュート・ヒロインのサクセス・ストーリーじゃない。
言うなれば、やられたらやり返す!
ネックレスを取り戻すミッション立てたり、カーチェイス繰り広げたり、リベンジは過激に!
でも最たるは、長らく“エステラ”として生きていたが、バロネスのあるパーティーに自分の本性で飛び入り出席。
そう。あたしは、クルエラ!
オリジナルのアニメでファースト・インパクト。
グレン・クローズによる『101』でセカンド・インパクト。
あまり悪女のイメージやそれ所か演じた事の無いエマ・ストーン。
が、心配は無用だった。さすが同世代きっての演技派。この名ヴィランを見事、自分のモノにした。
優しきエステラとダークなクルエラの演じ分け。
本作のヴィランはエマ・トンプソン演じるバロネスで、こちらもさすがの存在感を見せるのだが、個人的にエマvsエマは、エマ・クルエラの方が断然だった。
絶好調エマ・ストーンにまた一つ、新たな魅力の作品と役が誕生。
この時はまだ“家族”のようであったジャスパーとホーレス。2人のキャラもいい。アニメや『101』ではクルエラにビビってた気がしてたけど、これからの苦労をお察しします…。
彼らの賢くてキュートなわんちゃんも頼れる家族。
バロネスの側近、マーク・ストロング。ナイスな役所!
バロネスからネックレスを取り戻し、ダルメシアンも盗んだクルエラ。
ファッション面でも、不調のバロネスに対し、クルエラの先鋭的なファッションは注目の的。
が、暴走する者は必ず躓く。
己の復讐心に燃え、心配するジャスパーとホーレスをこき使い、蔑ろに。“家族”の間に不和が…。
遂に抜かり無いバロネスに尻尾を掴まれる。絶体絶命…。
思わぬ事が起きて、窮地を脱出。
が、その直後知らされた、驚愕の真実…。さすがのクルエラでも動揺を隠せない…。
でも、それを受け止めるしかない。
産まれ持ったファッション・センス、他人とは違う自分…これらを武器に“産みの母”と戦う。
優しさは、“育ての母”に感謝して。
いつまでも嘆いてはいられない。
だって、あたしはクルエラ!
やられたらやり返す!
さあ、再びリベンジの開始だ!
リベンジも痛快。
ある人物への追悼文もクルエラらしい。
ジャスパーとホーレスのみならず、ダルメシアン、アニータ、あの歌、そしてクルエラ・ド・ヴィル(クルエラ・デ・ヴィル)の名称…アニメへ彷彿させるようなリンクネタにニヤリ。
続編製作も決まったとか。
そりゃそうでしょう。
まだまだ誕生秘話。
ここから私たちが知るクルエラにどうなっていくのか。
クルエラ大攻進は始まったばかり!