「パンク・ムーブメントの現代的な解釈が素晴らしい一作。」クルエラ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
パンク・ムーブメントの現代的な解釈が素晴らしい一作。
美術全般、特に衣裳は見応え十分!悪役(ヴィラン)の前日譚ということで、『ジョーカー』(2019)と似ている、という意見もあるようだけど、むしろ後半の展開は、『デッドプール2』(2018)を彷彿とさせました。
1970年代のロンドンが舞台となっているので、ファッションにおけるパンク・ムーブメントとオートクチュールのせめぎ合いという時代背景があります。若きデザイナー、エステラ(クルエラ)と伝説的デザイナー、バロネスの対決はまさにその対立を象徴していて、エステラによるバロネスの晴れ舞台の潰し方に毎回趣向が凝らされていて、とても見応えがあります。
エマ・ストーン扮するエステラの強烈な個性に対して、バロネスを演じるエマ・トンプソンの唯我独尊ぶりもまたいっそ清々しいほどで、ちょっとした仕草や言葉で相手をこわばらせる、一瞬持ち上げたかと思うと容赦なくたたき落とす、といった非情な演技はとても素晴らしく、トンプソンの円熟した演技を堪能できます。ちょっと残念なのは、クルエラの仕掛けに対してバロネスが憮然とした面持ちで立ちすくんでいる、という描写が連続することです。彼女ほどのカリスマと才能を持っているなら、自分の見せ場を潰しに来られたら絶対何か返しをするはずだけど!とはいえ、これはほんの些細な引っかかりで、全体的に素晴らしく密度の濃い作品です。
『101匹ワンちゃん』のクルエラの言えば長めのシガレットホルダーですが、本作には喫煙の描写が一切ないところに現代性を感じますね。
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