劇場公開日 1977年3月5日

「圧巻の映像演出。憎悪の炎はしぶとくくすぶる。」キャリー(1976) 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0圧巻の映像演出。憎悪の炎はしぶとくくすぶる。

2011年12月24日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

悲しい

怖い

TOHOシネマズで開催の『午前十時の映画祭』にて鑑賞。
原作S・キング、監督B・デ・パルマという魅惑の組合せ。

自分は昔からキング氏の著作が大好きでして、
『キャリー』の原作も映画も何度も観ております。
そういやここ数年観直してないなぁと思い、
この機会にと劇場へ向かった次第。

狂信的な母親に育てられた内気な高校生キャリーは
クラスメイトにとって格好のいじめの対象。だが彼女には、
強い怒りを感じると発現する隠された力が備わっていた……
と、あらすじだけ聞くとどうにも陳腐かもだが、
実際に観ればそんな考えは跡形もなく吹っ飛ぶ。
いやはや、スゴイ映画ですよ、何度観ても。

強烈なオープニングで引き込み、
結末に向けて徐々に上がってゆく温度。その巧みさ!
終盤のプロムパーティのシーンはデ・パルマ監督の真骨頂。
スローの多用、縦横無尽のカメラ、フェティッシュな視線……

忘れ難いのは、キャリーとトニーのダンスシーン。
カメラが延々とふたりの周囲を回り続ける中、
この上なく幸せそうな表情を浮かべるキャリー。
あのシーンに思わず涙を流してしまった。
どうしてこの無垢な少女が、あんなに
惨い仕打ちを受けなければならないのか?

観客はこの物語の避けられない悲惨な結末を
知っている。あるいは薄々勘づいている。
恐ろしい物語だったはずという記憶には
少しの狂いも無かったが、こんなにも
哀しく美しい物語だった事は久しく忘れていた。

そして迎えるクライマックス。
主人公の感情と同調するかのごとく、
堰を切ったように炸裂する映像演出。
血染めのようなどぎつい赤のライティング、
キャリーの異様な表情と逃げ惑う
人々とを同時に捉える画面分割、
一瞬で網膜に焼き付く鮮烈なショット……

恐ろしい。
歯を食い縛っていないと、歯がカチカチ
鳴ってしまいそうなほどの恐ろしさだ。
映像と感情とがここまで完璧にシンクロ
した映画には滅多にお目にかかれない。

初見の方なら飛び上がるだろうあのラストも見事。
昨今のホラー映画ではラストで観客を驚かせる
演出が必ずと言っていいほど盛り込まれているが、
その手の演出は本作がハシリだとか。
だがこの映画のラストは、単なる
こけおどし以上の苦い余韻を残す。
死してなお消えない深い深い憎悪、
そしてくすぶり続ける自責の念……。

みぞおち辺りにズシリと響く傑作ホラーだ。

<2011/12/4鑑賞> ※2011.12初投稿

浮遊きびなご
GokiPinoyさんのコメント
2013年10月25日

私も77年公開当時に映画館で見ました。

シャワールームのシーンで赤面し、
ラストではむしろ周りの観客の絶叫に驚きました。

当時の前評判が「青春ドラマ」としても楽しめるからと、
観客に女子大生や女子高生が多かったですからね。

リメイク版も是非ご覧下さい。
クロエちゃんのキャスティングは微妙でしたが、
これはこれで楽しめると思います。

GokiPinoy