劇場公開日 2021年6月5日

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「【ハイブリッド・シティ】」デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【ハイブリッド・シティ】

2021年6月17日
iPhoneアプリから投稿

デニス・ホーが、アメリカ・ワシントンの公聴会で、
香港を「Our hybrid city」と呼んでいた。
デニスが、涙を堪えて声を詰まらせているように聞こえた。
この場面は胸が熱くなる。

アニタ・ムイと出会い、
アニタ・ムイが亡くなった後、追いかけ、乗り越えるように歌手として大成功を収め、
LGBTの差別を禁ずる法案を後押しし、勝ち取り、
自身が同性愛者であることをカミングアウトした場所だ。

そして、ひとりの民主活動家として、自由を求める人々の象徴として雨傘運動に参加した場所。
拘束された場所。

本来は、共産主義と民主主義が共存し繁栄するはずだった場所。

90%の収入を失った場所でもある。

こうした多様性が混在し、ハイブリッドな国際都市となるはずだった香港は、今、危機に瀕している。

周庭や黄之峰は、デニスの背中を追いかけるように民主化運動を展開していたのかもしれない。

先般、この作品の上映を機に、TBSの報道番組が、デニスにコンタクトを試みたが、返信はなかったと言っていた。

その直後、周庭が釈放されたことでふと感じたのは、デニスは、自身の逮捕の際よりも、現在は、もっと中国からの締め付けが強くなっていて、自身の発言が民主活動家を刺激し、更なる悲劇につながることを危惧しているのではないのかということだった。

周庭氏は、解放直後に、真っ黒な画像をインスタにアップして、少し身体を休めたいとメッセージを発していた。
まだまだ、彼女たちの闘いは続くのだろうか。

僕の知り合いの台湾出身でカナダ国籍を持つ海外のグローバル企業で働く人は、会社から香港に出張しないように言われている。

日本の企業には、こうした配慮はあるのだろうか。
香港に出張できないのであれば、まさか有用性は低いなどと考えられたりはしてないよねと念を押したくなる。

僕は、チベット問題、内モンゴル問題、新疆ウイグル族へのジェノサイド、香港民主主義への弾圧を抗議するアムネスティに実名で署名している。

それで、僕は、もう香港や中国に渡航することを諦めている。
なぜなら、中国政府は、中国以外の外国人でも、こうした抗議活動に参加した場合、中国国内では罪に問われるとする法律を制定したからだ。

つまり、中国政府は、ネットを通じて、あんた達を監視してるという脅迫をしているのだ。
ただ、こうした脅しをするということは、同時に中国政府は民衆の力を恐れているということでもある。
だから、脅すのだ。
反社会的勢力と同じだ。
先般、NECを干すとか言っていた我が国のIT大臣もこの類だ。
バカだ。

もとい。
僕はバックパッカーとし世界中を旅もしたし、宗教遺跡を訪れるのも好きなので敦煌には一度行ってみたかったが、そんなことより、チベット、内モンゴル、新疆ウイグル、香港への弾圧を阻止することの方が重要だ。

日本の政権の動きは鈍い。
こうした人権問題で率先して動くのは、大概ヨーロッパかアメリカだ。
日本には、尖閣諸島付近に中国船が現れると大騒ぎする特殊な走性を持つ人種がいるが、この人種は人権問題だと、なりを潜めている。頭が追いつかないのだろうか。

政権には、香港の人材を呼び、東京を再び国際金融都市に…なんて計画があるというが、そんな香港の混乱に乗じた計画は、やらずぼったくりみたいで好きにはなれない。

香港の人達は、まだまだ闘う気持ちの人も多いのだから、そうした人達に失礼だとは思わないのかと言いたくなる。

安倍、菅義偉と続いた政権で、日本もモラリティが低下してしまったのだろう。

この作品を観て、デニスはすごいとか、周庭は頑張ってるとか、香港は大変だと思うのは当たり前として、是非、事態をニュースだけではなく、抗議運動はアムネスティなどでも展開しているので、署名して抗議の意思を明らかにしても良いというのであれば、参加して欲しい。

そうした世界の胎動をあの国の政府は恐れているはずだ。

世界から孤立するのを恐れているはずだ。

ワンコ