劇場公開日 2022年1月14日

  • 予告編を見る

「胸一杯のリスペクトを贈りたい台湾映画の傑作」無聲 The Silent Forest LukeRacewalkerさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 胸一杯のリスペクトを贈りたい台湾映画の傑作

2025年11月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

10月31日の日中に新宿武蔵野館で公開初日の『ひとつの机、ふたつの制服』を観て、主演の陳妍霏(チェン・イェンフェイ)にノックアウトされてしまったので、帰宅してから彼女の代表作であるこの『無聲 The Silent Forest』をアマプラで視聴した。

驚くべき傑作だった。
2020年、陳がまだ20歳の頃の作品だが、日本公開は2022年1月だったらしい。まったくノーマークだった。

『無聲』の主役は「台湾の柳楽優弥」みたいに見える俳優であるが(私見です。もちろんこの俳優もとても良い)、陳は重要なバイプレイヤーであり、彼女はこの作品の演技で台湾国内およびアジア圏の有力な賞を軒並み受賞している。
日本語のWikipediaはページが存在しないが「陳妍霏」で繁体字中国語ページがあるので右クリックで日本語訳が読める。

作品の出来として何よりも感服したのは、実際に台南の国立ろう学校で起きていた127件もの性被害事件を正面から取り上げて映画化していること、特に声をあげにくい、あげても軽視されがちな障がい者への加害について過不足なく取り上げていること、性被害者が「自分が我慢すればよい」と沈黙することもあること、そして性加害者は同時に性被害者であることも少なくないこと、つまり性暴力が連鎖していくことをエンディングにまで敷衍していることだ。
加えてジャニー事件を想起させる胸糞悪いプロットもある。
そして事件と犯人を隠蔽する学校と職員たち、「恥」を晒したくないという保護者。
一人だけ生徒を助けようと奔走する教師。

台湾という割合と小さな国のこぢんまりした社会で、これだけ腹を据えて性加害問題から目を逸らさずに向き合った制作陣に、心から拍手を贈りたい。
その描き方、映画としてのクォリティも極めて高いと思う。
これに匹敵するアジア映画(日本を含む)は一体あるだろうか?

にも拘らず、日本公開時にあまり話題になっていなかったのは、なぜか。

コメントする
LukeRacewalker
PR U-NEXTで本編を観る