「この子はこれからどうすれば…」無聲 The Silent Forest ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
この子はこれからどうすれば…
普通学校から聾学校に転校してきた主人公が、気になる女の子が通学バスの中で性暴力を受けているのに気づく。助けようとするが被害者の女子生徒は加害者の生徒も友達だから何もしないで欲しいと頼む。また学校側も大事にしたくないという態度で、主人公は理解ある若い教師に相談し、校長先生と本格的な聞き取り調査をすると、被害者が次々と現れ、主犯格の生徒が明らかになる。学校は調査結果を公表し、撲滅すると宣言する。
先生に転校を勧められた女子生徒は、幼稚園からこの聾学校におり、外の学校に行くの嫌だ、虐められるより孤独の方が怖い、と言う。
卒業式で校長先生が優秀な退職教員を紹介しながら、特別学校の運営は大変だと言う。
いつも不敵な笑みを浮かべている主犯格の生徒にメールが来て、様子が変わる。ある日主人公が体育倉庫に連れて行かれ、主犯格の生徒に、彼女に二度と乱暴されたくなかったら、羽交締めにされている下級生に性的嫌がらせをしろと脅され、仕方なく受け入れる。その動画が流出し、彼も母親に転校しなければと言われるが、彼にとってもやはり普通学校よりこの学校の方が良いのだった。
約束した筈なのに、彼女がまたレイプされたのを知り、主人公は主犯格をボコボコにする。ケガで入院した彼を見舞った教師は、彼が自傷行為をしていることを知る。
その病室にある人物が現れる。
主人公は同級生に呼ばれ、あるビデオを見せられる。それは10年以上前からの美術室前の監視カメラで、卒業式で退職時に表彰されていた美術教師がまだ幼い主犯格を頻繁に連れ込んでいるビデオだった。同級生は学校にビデオを削除するように言われたという。
若い教師は主人公にそのビデオを見せられ、主犯格の生徒に会いに病院へ行く。屋上にいた彼は全てを打ち明け、美術教師が憎い、なのに卒業式で彼を見て嬉しさを感じた、憎くて堪らないのに病室に来た彼を自分から触ってしまった、僕は変態なのか?と苦しみを告白する。
通学バス車内ではまた生徒たちが大騒ぎしており、主人公も仲間に加わる。しかしかつて女子生徒が性暴力を受けていた一番後ろの席には、主人公が彼女を助けるために性暴力を与えた下級生が怒りを湛えた目で騒ぐ主人公達を見つめ、1つ前の席で眠っている生徒に何かをしかけようとするのだった。
唖者なので助けてと叫べないし、周囲も聾者なので聞こえない。映画の4分の3は聾者ならではの苦しみであったが、小児性愛がいかに罪深いことかという問題でもあった。
若い教師が美術教師を普通に退職させただけの校長を責めた時、校長は「学校運営の大変さを理解していない」と言い、ますます怒りを覚える。しかし特別学校が閉鎖になると生徒達も困るため、何がなんでも守らなくてはならないのは事実。やっぱり国や自治体の体制も問題なのだ。