「平和で生きていられる今に感謝」FUNAN フナン KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
平和で生きていられる今に感謝
フランス映画祭2020横浜にて鑑賞。
アニメーション映画だが非常にバイオレンスな作品であり、作品に没入すればするほど激しい憎悪を抱く作品でもあった。
主人公の妻チョウと夫クンは突然現れた武装組織に村を乗っ取られ、それまで平和に暮らしていた生活を一瞬にして奪われる。
強制的に村から追い出し、そして強制労働をさせられる日々を強いられる。
村を離れる際に3歳の息子ソヴァンを見失い離れ離れとなってしまう。
息子を失った悲しみを背負う2人だがそれだけでは終わらない。別々に働からさせ、恵まれた食事も与えられず過酷な労働だけは強いられる。
時には髪を強制的に切られ、時には妹が武装組織に襲われて命を失い、時には家族を殺され…村人の者もまた子供達を奪われ強制労働に組織の入れられ教育を強いられたりとあらゆる自由を奪い、苦しめ傷つけられる。
そんな中チョウとクンは一瞬の隙を見つけ逃げ出し、最後はソヴァンを見つけ出す事ができた。
3人で脱国を試みるも最後の最後でクンは組織に捕まり命を落とす…
この作品は監督の母の体験に着想を加えたストーリーだというがこのような事実が40数年前にカンボジアで起きていたというのだからとても恐ろしい事実だ。
改めて今平和でそして自由を与えられ日本で生きていられる事に感謝の気持ちでいっぱいになる。
またこの作品では自由をこれでもかという奪うシーンが多々ある。
もちろん今の日本に生きる今、この作品のような自由の奪われ方はなかなか存在しないと思うが、今の日本の社会でも自由が奪われるケースは決してゼロではないだろう。
自由を奪う側はその気はなくても奪われた側はとても苦しみそして大きな傷を負う。その傷は一生残るものとなりそして人格まで変わってしまう。
この作品ではチョウの最初と最後の変わりようにはすごく心が傷められる。
この作品を鑑賞する事で改めて相手の自由を尊重し、そして自由を奪われた者の苦しみ、悲しみが心の底から感じられる作品であった。