「ここにいない大切な人たちへ」この世界に残されて ミツバチば~やさんの映画レビュー(感想・評価)
ここにいない大切な人たちへ
毒舌を吐く16歳の少女の、傷ついた心にいち早く気付き、自身の傷と重ね合わせていく産婦人科医のアルド。
この映画を、年の離れた男女の恋ととらえることもできるだろうが、そんなに単純ではない。
なぜ、自分を追い求めるのか。
少女クララの心が解けていくに従い、アルドはクララに対してリスペクトすら感じるのだ。
守っているつもりの大人が、実は子どもに助けられている。
クララが変化するにつれ、周りの大人も変わっていく。
クララは感情を失くしたアルドの心に気づいていたから。
ほかの大人とは違う、何かを感じたに違いない。
ホロコーストを生き抜き、戦後になってもその傷が癒えない人たちが、新たに家族を作っていくストーリー。
もう一つの側面、アルドとクララの気持ちの揺れ。最後に大人の決断をしたアルドの心の強さが素晴らしい。
父の面影を重ねて、恋と勘違いをする年齢の少女を、心の友として大切に扱うことの難しさ。
心の機微が、アルドの視線、クララの言葉で切ないくらいに表れていて、秀作ですね。
年明け一番が、この映画でよかった。
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